研究課題
本研究ではNOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJ (NSG)マウスに消化管手術患者の腸管膜動脈を移植するヒト血管移植モデルの構築を目指した。しかし移植後に血栓閉塞の合併症ががみられ、その原因にGr-1+細胞の関与が疑われた。そこで移植マウスをBALB/c IL2Rg -/- Rag -/- (BRG) マウスに変更した。またヒト皮膚の移植モデルにも着手、デルマトームで採取した余剰皮膚を用いて、最終年度にNSGマウスへのヒト皮膚移植を実施した(n=8)。しかし、同様にGr-1+細胞による異種反応により移植片の生着が得られなかった。皮膚の提供件数が少なく研究が滞る現状があり、定期的にヒト皮膚が得られる施設との共同研究を準備している。また繁殖後のBRGマウスを用いて、C57BL6をドナーとした心移植を実施した(n=3)。拒絶反応無く全例生着し、興味深いことに心グラフト内のpassenger細胞が免疫不全マウスに生着し、マウス末梢血でT細胞の存在が確認された。即ち少量のリンパ球も移入可能な実験ツールとしての有用性が示唆された。一方、肝移植後のHLA class II抗体検出例にLabscreenを実施し、血清を14例、延べ28回分採取した。これらのdataをまとめ臨床的意義や陽性症例の特徴につき、複数の学術集会で報告した。また移植後抗体はほぼ全例class IIであり、class I抗体の採取は困難であったが、最終年度に移植前のリンパ球クロスマッチ陽性の保存血清(12例)を測定し、移植後グラフト不全で死亡した5例は予後良好の7例と比べ有意に高値(DSA-MFI 2万程度)であった。このように抗HLA抗体の臨床的な意義(線維化や予後との関与)は明らかにできたが、病理学的機序は未だ不明であり、今後のヒト化マウスを用いた研究で明らかにしたい。
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