研究課題
肝細胞移植では、現在主流となっている門脈内細胞移植法では、肝虚血再灌流障害による類洞内皮障害と内皮剥離部位への血栓凝固付着・微小循環障害により、十分な生着はほとんど望めないのが現状である。これを打破するために親生体素材シートを用いて肝表面への細胞移植に着手した。まず予備実験として、ケラチノサイトシート(商標名:セプラフィルム)を用いた肝表面への膵島移植を既に成功させた(第41回日本膵・膵島移植研究会発表)。これにより、肝表面の移植膵島細胞が被膜を通過して肝内に生着することがわかった。そして、肝細胞で同様の現象が確認できれば臨床応用が望める簡便かつ安価な方法になると考えられた。次に、同様の手法で肝細胞の肝表面移植に着手した。しかし、肝細胞より大きな膵島細胞が肝被膜を通過したにもかかわらず、肝細胞になると肝被膜を全く通過しないことが分かってきた。原因は細胞のサイズではなく、細胞の性質によるものと考えられた。このため細胞をMSCにすることも考えたが、まずは親生体素材シートではなく自己肝細胞シートに変更してみることとした。本研究では自己線維芽細胞シートを用いて肝表面に腎被膜下と類似の環境を作ることで、原始免疫反応を回避し、移植成績を向上させることを目的とした。方法としては、F344ラット新生児より採取した線維芽細胞を用いて、線維芽細胞シートを作成。次に無アルブミンラットの肝表面にF344ラットより分離した肝細胞をのせ、線維芽細胞シートで覆い移植用被覆肝細胞を作成した。これを無アルブミンラットに移植した。移植部位は門脈、脾臓実質内、腎皮膜下、肝臓実質内、大網、鼠径部ADSC(脂肪)、皮下、筋肉、腹腔内の9か所。血清アルブミン値の推移と免疫染色にて生着を評価した。現在各部位に移植したラットを作成し、アルブミン値を測定中。
3: やや遅れている
上述のように、肝細胞より大きな膵島細胞が肝被膜を通過したにもかかわらず、肝細胞になると肝被膜を全く通過しないことが分かっためである。その後、親生体素材シートではなく自己細胞シートに変更し再度実験をスタートした。
研究方法としては上述の通りだが、F344ラット新生児より採取した線維芽細胞を用いて、線維芽細胞シートを作成。次に無アルブミンラットの肝表面にF344ラットより分離した肝細胞をのせ、線維芽細胞シートで覆い移植用被覆肝細胞を作成した。これを無アルブミンラットに移植した。移植部位は門脈、脾臓実質内、腎皮膜下、肝臓実質内、大網、鼠径部ADSC(脂肪)、皮下、筋肉、腹腔内の9か所。血清アルブミン値の推移と免疫染色にて生着を評価した。現在各部位に移植したラットを作成し、アルブミン値を測定中。今後の展望としては、至適移植部位が確認できたのち、IVISを用いて移植細胞の経時的な残存率を評価する。
残1418円であり、予定通りの支出である。
すべて 2018 2017
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