研究課題/領域番号 |
16K10418
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松田 安史 東北大学, 大学病院, 助教 (00455833)
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研究分担者 |
桜田 晃 東北大学, 加齢医学研究所, 准教授 (60360872)
野田 雅史 東北大学, 大学病院, 講師 (70400356)
渡邉 龍秋 東北大学, 加齢医学研究所, 非常勤講師 (70636034)
岡田 克典 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (90323104)
星川 康 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (90333814)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 肺移植 / 慢性拒絶反応 / 肺内リンパ新生 / 肺内気管移植モデル / IL-17 |
研究実績の概要 |
ヒト肺移植後慢性拒絶反応であるbronchiolitis obliterans syndrome(BOS)の病態は、肺内で生じるリンパ新生(lymphoid neogenesis)と再気管支の線維化に夜気道閉塞である。正常肺には認められず、慢性拒絶反応を惹き起こした肺で認められるこのlymphoid neogenesisが、肺内の細気管支で起こる気道閉塞を促進させている可能性が示唆されている。このlymphoid neogenesisでは、通常のリンパ節の構造と同様にB細胞がリンパ濾胞を形成し、T細胞が散財して濾胞を形成している。Lymphoid neogeesisが形成されることで成熟したB細胞やT細胞から産生されるTNFaやlymphotoxin alfaやbetaが線維芽細胞などのstromal cellの形成を促進し、気道の線維化が誘導されると考えられる。この病態のモデルとして、ドナーの気管をレシピエントの肺内に移植するマウス肺内気管移植モデルを使用する。このマウス肺内気管移植モデルでは、syngeneicの移植で移植後28日後に気道内腔は閉塞しているが、allogeneicな移植では、拒絶のため気道内腔は閉塞し、その周囲にはlymphoid neogenesisが認められる。閉塞した気道の周囲のlymphoid neogenesisにはB細胞によるリンパ濾胞が認められ、T細胞や樹状細胞により成熟したリンパ節の構造が認められる。リンパ濾胞内で起きる抗原提示細胞によるT細胞の活性化が、IL-17の産生を促し、B細胞の活性化を引き起こしてドナーの細胞障害を引き起こす。このT細胞の活性化を抑制する目的でCTLA4(Cytotoxic T-Lymphocyte-associated antigen 4)-Igを用いることとした。これは、抗原提示細胞からCD28を介した刺激がCTLA4と共刺激となることによりTが活性化されIL-17を産生することとなる。CLTA4-Igを用いることによりこのT細胞の活性化を抑制し、ひいてはlymphoid neogenesisを伴った慢性拒絶反応による細気管支の線維化を抑制することに繋がると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CTLA4の抑制による慢性拒絶反応の抑制の効果を検討するために、マウス肺内気管移植モデル(intra-pulmonary tracheal transplantation:IPTT)を使用した。このモデルでは、肺内気管移植後28日経過後に認められる移植気管内の線維化がlymphoid neogenesisを伴うヒト肺移植後慢性拒絶反応と類似している。肺内気管移植を行なったマウスを2群に分ける。一つはコントロール群で肺内気管移植を行なったあと、200ulPBSを腹腔内投与する。もう一方は、CTLA4-Ig群とし肺内気管移植を行なったあと、CTLA4-Ig500ug(200ul)を腹腔内投与を行う。28日後に犠牲死し各群を比較検討した。摘出された気管内腔の閉塞率を検討したところ、コントロール群に比較して、CTLA4-Ig群で有意に気管内腔の閉塞が改善されていた(Control vs CTLA4-Ig; 90.0±2.4 vs. 65.3±11.4 (average±SEM), respectively, p<0.05, N=6)。また、control群における移植気管周囲のlymphoid neogenesisの広さを基準としたところ、CTLA4-Ig群ではコントロール群に比較してその面積がおよそ26%であり有意にlymphoid neogenesisが抑制されていた(Control vs CTLA4-Ig; 1.00±0.34 vs. 0.26±0.15 (average±SEM), respectively, p<0.05, N=5)。この結果から、allogeneicな移植ではlymphoid neogenesisが起きて肺内でリンパ球が活性化されそれにより産生された増殖因子により移植気管が線維芽細胞の増殖により閉塞するが、CTLA4-Igの投与を行うことで、抗原提示細胞によるT細胞の活性化を抑制することにより、肺内リンパ新生であるlymphoid neogenesisが抑制され、移植気管の内宮閉塞が抑制されたことが示唆される。
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今後の研究の推進方策 |
マウスを用いた肺内気管移植モデルにおいて、CTLA4の阻害により抗原提示細胞からT細胞の活性化が抑制されることで、移植気管内腔の線維芽細胞の増殖が抑制され、内腔閉塞が軽減されたと考えられる。今後はこのメカニズムを解明するために、肺内気管移植が行われた肺からリンパ球を分離し、Th17の細胞分画を検討する。また、リンパ球がstromal cellの一つである線維芽細胞を活性化するメカニズムを解明するため肺内のINFgannma, TNFalfaの発現をqPCRを用いて検討する。活性化したstromal cellはケモカインを分泌しさらにTh17細胞を活性化するために、CCL21, CCL19, CXC13の発現をqPCRを用いて検討する。CTLA4-Igは抗リウマチ薬であるAbataceptとしてヒトに投与されている。今後はAbataceptの肺移植後慢性拒絶反応に対する治療としての臨床研究を行うためのデータ整理、および発表を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費として使用したマウスおよび試薬を適切に使用したため次年度使用額が生じた。これを次年度にマウス購入費にあてて実験を進める。
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