合計で10例{血液不適合移植4例(リツキサン(RTX)施行)、血液適合・一致移植(RTXなし)6例)を集積した。観察期間中に明らかな細胞性・抗体型拒絶反応を認めなかった。腎移植術前(RTXなし)、腎移植術前(RTX済み)、腎移植後(RTXなし)、腎移植後(RTX済み)、腎移植長期術後(RTXなし)および腎移植長期術後(RTX済み)に分け、さらにそT細胞、CD4およびCD8細胞の表出糖鎖の網羅的解析を行った。全体をヒートマップによるクラスター階層分析で解析したところ、RTX前後での変化が顕著であった。T検定で調べたところ、RTX前後でPHAL、BPL、GSLIB4、EEL、rGAL3CおよびrLSLNで変化を認めた。また、移植前後ではクラスター解析で目立った差は認められなかったが、T検定ではrACG、SNA、TXLCL、NHL、ASA、rBANANA、rAALおよびrMOAで発現量の有意差を認めた。長期フォローによる変化を調べたところ、LFA、SNA、SSA、TJAI、DSA、TXLCL、rGAL87、rGAL9N、rC14、NPA、ConA、rRSL、AAL、rAAL、rPTL、TJAII、FLAG_EW29CHおよびFLAG_EW29CH_E20Kで有意差を認めた。特に、血液不適合移植4例では6か月以上の長期フォローでSNA、SSA、TJAI、DSA、rC14、BPL、PHAE、NPA、AAL、rAAL、rPTL、rBC2LCN、LTL、GSLIB4、rMOAおよびrGAL3Cに有意差を認めた。全例でBリンパ球数は術前並みに戻っているものの、坑A・坑B抗体の発現量は抑制されたままだった。以上から、本研究では拒絶反応による糖鎖発現の変化を調べことはできなかったが、血液不適合移植における免疫寛容を解明する手掛かりとなる可能性が示唆された。
|