研究課題
これまで研究代表者らは、食道癌における"tumor budding"の臨床的意義を報告し、またEMTの代表的マーカーであるE-cadherinとvimentinのmRNA発現比から算出される「EMT status」とtumor buddingの相関についても報告してきた。(1)食道癌切除検体を用いた「Hybrid EMT」の臨床的意義の検討食道癌患者の血液サンプルを用い、「Hybrid EMT」のマーカーとなりうるmiRNA の解析を行った。既知であるEMT status別にそれぞれ4検体、計8検体に対して、高性能DNAチップ基板3D-Geneを用いてmiRNAの網羅的解析を施行し、候補遺伝子を同定した。さらに、教室の食道癌切除血清検体111例を用い、上記の候補miRNAにつき定量PCRにて測定した結果、TGF-βシグナルの調節因子として報告されているmiR-193bが有力な候補であることが判明した。(2)胸管内リンパ液中における微小癌細胞同定手技の検証一昨年度につづき昨年度も、胸管内リンパ液における微小癌細胞を同定する実験を試みた。食道癌手術中に胸管からリンパ液の回収を行い、EpCAM (Epithelial cell adhesion molecule; 上皮細胞接着分子)のモノクローナル抗体を用いて末梢血循環腫瘍細胞 Circulating Tumor Cells (CTCs)を検出する試みであったが、信頼性に足る十分な結果が得られなかった。一つは術前化療症例が増加してchemo naiveの症例が稀であったこと、もう一つは鏡視下手術の導入により、検体採取自体が容易でない状況になったことが挙げられる。したがって、胸管内リンパ液の代替として血液サンプルを、微小癌細胞の代替としてmiRNAマーカーの同定を代替法とし、循環する微小癌細胞を分子生物学的に同定・評価することを新たな概要として設定した。結果としてmiRNAマーカーを複数用いてパネルを設定し、これを用いて化学療法感受性を予測できたことを論文報告した。
すべて 2019
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Journal of Translational Medicine
巻: 17 ページ: -
10.1186/s12967-018-1762-6