研究課題/領域番号 |
16K10433
|
研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
猪股 雅史 大分大学, 医学部, 教授 (60315330)
|
研究分担者 |
衛藤 剛 大分大学, 医学部, 講師 (00404369)
平塚 孝宏 大分大学, 医学部, 助教 (20600886)
小林 隆志 大分大学, 医学部, 教授 (30380520)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 光線照射 / 腹膜炎 / LPS |
研究実績の概要 |
最終研究目標;「低侵襲性の向上」と「炎症性疾患の治療」の機能を併せ持つ次世代内視鏡デバイス開発 【平成29年度の研究テーマ】;光線照射は手術侵襲に伴う強い腹腔内炎症を抑制できるか? <研究の成果>;1. 方法; LPS腹膜炎モデルに開腹操作を加えることによる腹膜炎における手術侵襲モデルを作成し、これを用いて光線照射群と非光線照射群の比較検討を行った。前年度は620nmと830nmの照射群を用いてこれらのモデルにおける抗炎症作用を認めた。今回は太陽光に近いスペクトルを有する蛍光灯をモデルに照射して血清中及び腹水中のサイトカイン測定ならびに病理組織像を調べた。2. 結果; 血清中及び腹水中のIL-6及びTNF-αは、LPS投与3時間後にピークを迎え12時間まで漸減することを確認した。更に12時間後では、光線照射群の血中及び腹水中のIL-6及びTNF-αは、非照射群に比べ有意に低値であった(p<0.05)。病理組織像では、光線照射群における腹膜から筋層までの距離は非照射群のそれに比べ短く、腹膜の浮腫が光線照射により軽減されたと判断した。3. 意義・重要性;異なる波長の光線照射が腹腔内炎症に対する抗炎症効果を局所ならびに全身でも発揮するという現象を捉えた。これは光線照射により手術侵襲が加わった腹腔内炎症を直接抑制できるという我々の仮説をより強くするものであり、腹腔鏡光源としてこれらの抗炎症光線を搭載することにより腹腔鏡下手術患者の臓器への直接光線照射が可能となり腹腔内炎症の軽減効果、それに伴う手術の低侵襲化が期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機械的操作による手術侵襲モデル作成を試みるも炎症マーカーの上昇が不十分であったためLPS腹膜炎モデルに開腹操作を加える手術侵襲モデルへの変更を行なった。その結果、LPS腹膜炎モデルにおいて抗炎症に有効な光線、全身ならびに局所の抗炎症効果が複数のサイトカインにより捉えることができ、その後の経過は順調と判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
現象を捉える研究に加え機序に関する研究を30年度のテーマ目標として行う。肺での抗炎症効果を捉えるべく気管支肺胞洗浄液(BALF)中のサイトカイン測定を施行するも、IL-6は6時間後で有意差がついたが、BALF中のTNF-αの推移はばらつきがあり、肺の病理学的な変化も捉えられていない。この原因としてマウスの好中球は小さくリンパ球と見分けがつきにくいため、HE染色では肺の病理学的変化がない(好中球浸潤の程度に差がない)可能性を考え、抗好中球抗体での染色を行う予定とした。さらに腹水洗浄液及び気管支肺胞洗浄液中の白血球数、各臓器における病理組織学的評価、各臓器のmyeloperoxidase (MPO)測定、網羅的サイトカイン測定を行う予定としている。
|