研究課題/領域番号 |
16K10435
|
研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
潮平 知佳 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50325833)
|
研究分担者 |
野口 洋文 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50378733)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 組織特異的幹細胞 / iPS / ES / エピジェネティックメモリ / 人工間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、iPS細胞作製技術を応用して、マウスおよびヒト間葉系細胞より人工間葉系幹細胞(マウスinduced tissue-specific stem cells from mesencymal cells:iTS-MおよびヒトiTS-M細胞)を樹立することを目的とし、平成28年度にはマウスiTS-M細胞の樹立およびセレクションマーカーの決定を行う計画であった。また、我々はすでにマウス膵幹細胞(iTS-pancreas:iTS-P細胞)およびマウス肝幹細胞(iTS-liver:iTS-L細胞)の人工作製に成功している。この技術は様々な組織に関して応用が可能であると考えられる。今回、マウス膵組織に山中4因子(Oct3/4, Sox2, Klf4, cMyc)を一過性に発現させ、形態学的にiPSおよびマウス膵幹細胞(iTS-P細胞)、また線維芽細胞様のコロニー(induced fibroblast-like cells:iF細胞)の樹立を行った。iF細胞に関しては、膵および肝組織内に存在する間葉系細胞に導入遺伝子が発現することにより、間葉系幹細胞への誘導がされたのではないかと推察され解析を行った。結果、iF細胞は自己複製能を持ち中胚葉系マーカーであるmixl1の遺伝子発現がマウスES細胞よりも強く、マウス間葉系細胞寄りの発現が確認された。しかしながら、中胚葉系細胞である脂肪や骨芽細胞への分化誘導が弱く、テラトーマ形成能試験において、iF細胞を移植したマウスに腫瘍が形成され、組織病理学的検索の結果、膵腺癌様の組織形成が確認された。よってiPS/iTSを作製する過程においては、癌様細胞の出現も起こることが示唆された。よって、今後iTS細胞の樹立、培養条件を厳密にコントロールする方法と、作成した細胞の評価方法が課題である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスiTS-M細胞の樹立およびセレクションマーカーの決定を行うところまでが今年度の研究計画である。マウス膵組織に山中4因子(Oct3/4, Sox2, Klf4, cMyc)を一過性に発現するプラスミドを用いて遺伝子導入を試み、形態学的に繊維芽細胞様細胞(iF細胞)を樹立した。しかし、選択した細胞を安全性試験のため免疫不全マウスへの移植を行った結果、腫瘍形成が確認され、目的の細胞の樹立とはならなかった。よって、進捗状況の選択区分としてはやや遅れているのカテゴリーを選択したが、この原因は、遺伝子導入をマウス膵組織に行い、得られた繊維芽細胞様のクローンの数が少なかったため結果的にクローンの選択が不十分であったことが原因として考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の進捗の遅れの原因を踏まえて、次年度平成29年度は、細胞樹立方法を再検討し、次年度実験計画予定事項であるヒトのiTS-M細胞の樹立およびセレクションマーカーの決定まで行うことで、本年度の遅れを解消する予定である。細胞樹立方法および培養条件の具体的な再検討課題として、遺伝子導入方法をエレクトロポレーションによるプラスミドの導入法もしくは、自立複製能を持つRNAベクターを利用した導入法に変更する。さらに、遺伝子導入を自己複製能が衰えたヒト脂肪由来幹細胞に行い、効率よくiTS-M細胞を樹立する。また、ヒトiTS-Mの培養条件に関して、マウスiTS-P細胞ではES細胞培養条件で培養か可能であったが、ヒトiTS-Pの検討ではヒトES細胞培養条件ではうまく培養できないことが我々の予備実験で明らかとなりつつある。マウスiTS-M細胞の培養においてはiF細胞がES細胞培養条件で継代・維持が可能であることから、その培養条件で樹立が可能であると思われるが、ヒトiTS-M細胞に関して平成29年度で検討する予定である。まずは、ヒトES細胞培養条件で樹立を試み、うまくいかない場合は、ヒト間葉系幹細胞の培養条件で再度検討を行う予定である。
|