研究課題/領域番号 |
16K10436
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
来間 清人 琉球大学, 医学部, 委託非常勤講師 (10755713)
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研究分担者 |
潮平 知佳 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50325833)
野口 洋文 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50378733)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | p38MAPK / アポトーシス / 蛋白導入システム / 膵島移植 |
研究実績の概要 |
p38 MAPKはp38シグナル伝達経路における中心的な分子であり、アポトーシスおよび分化過程に関与していることが明らかとなっている。本研究では「蛋白導入システム」を用いて、p38MAPKの抑制剤を開発することを目的としている。膵島移植において、膵島分離中および膵島移植直後にp38MAPKは活性化され、膵島細胞のアポトーシスを誘導することが報告されている。p38MAPKの抑制剤が開発されれば、研究試薬として様々な実験に使用されるのみならず、膵島の抗アポトーシスペプチドとして臨床応用化することも期待できる。また、この方法が確立されれば、他の抑制剤も同様の手法によって作成が可能となるため、本研究は新規性が高く、独創的で画期的な研究であると考えられる。 平成28年度は、p38MAPK抑制に重要なアミノ酸配列を同定することに成功し、11R-109および11R-157ペプチドがp38MAPKを効果的に、かつ選択的に抑制することが証明された。平成29年度は、マウスの膵島を分離後、p38MAPK抑制ペプチドを投与し抗アポトーシス効果を判定した。また、同ペプチドを膵臓保存時および膵島分離時の溶液にも添加し、アポトーシス抑制効果を判定した。効果のより強い11R-157を用いて検討を行ったところ、このペプチドはアポトーシスを抑制し、膵島の残存率を向上させることが判明した。 次にp38MAPK抑制ペプチドで処理した膵島を動物に移植し、移植効果を確認した。移植膵島の生着率はペプチド投与群において有意に高いことが判明した。以上の結果により、11R-157は、p38MAPKの活性化を抑制し、マウス膵島移植成績を向上させることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は申請書通りに実験を実施し、予想された結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
<平成30年度計画:p38MAPK抑制剤投与によるブタ膵島細胞への効果確認> 前臨床試験としてブタ(大動物)の膵臓を用いて膵島分離を行い、p38MAPKの効果を検討する。現在までに、膵保存、膵島分離、分離後の培養、および移植直後の非特異的炎症反応により、膵島細胞内にストレス関連キナーゼであるp38MAPKが誘導され、アポトーシスがおこることが報告されており、これが、生着率低下に大きく関わっているものと考えられている。今年度は11R-157ペプチドをブタ膵臓保存時の溶液に添加し、アポトーシス抑制効果を判定する。判定は、p38MAPKの活性度の比較、islet equivalents の変化、アポトーシス細胞の割合、インスリン分泌率の変化などで判定する。同時に、蛋白導入法の安全性 に関しても検討する。 次にp38MAPK抑制ペプチドで処理した膵島を動物に移植し、移植効果をみる。ドナーは免疫不全マウスをストレプトゾトシンにて糖尿病にしたものを使用し、p38MAPK抑制ペプチド処理した膵島細胞を移植する。空腹時血糖、糖負荷試験、組織学的検索などを行い、移植細胞の評価を行う。研究分担者の教室では、膵島移植の手技は確立されている。同時にp38MAPK抑制ペプチドのin vivoにおける安全性を確認する。
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