研究実績の概要 |
NCDとACS-NSQIPによる外科医療の質の国際比較を可能とするNCD消化器外科領域のinterrater reliability の検証に関しては、日本消化器外科学会において2016年2月から3月に「テストAudit」が実施され、判定基準や判定方法の検討がなされ、Auditシステムの確立へむけて準備が進んでいる。以下の比較は信頼性が高いと思われる因子を用いて行った。継続的にACS-NSQIPとWeb会議を実施し、また、2017年11月に現地訪問し、患者の術前因子や術後合併症が死亡に及ぼす影響について、2015年に登録された以下の4術式について検討を加えた:結腸右半切除術(RHC:米国36,001例、日本18,353例、以下同順)、低位前方切除術(LAR:12,744例、18,388例)、膵頭十二指腸切除術(PD:4,946例、9,177例)、一区域以上の肝切除術(HR:1,699例、6,474例)。術前因子としては、年齢、BMI、糖尿病、介助、COPD、腹水、腎障害、体重減少、敗血症、緊急手術等の有無を含む20項目、術後合併症は、各種SSI、肺炎、予定しない挿管、肺塞栓症、48時間以上の人工呼吸、進行性の腎障害等を含む14項目について、術後30日死亡率との相関性Phi係数を用いて比較した。各々の術式の死亡率は、RHC(3.6 vs 1.3%)、LAR(0.9 vs 0.4%)、PD(2.1 vs 1.1%)、HR(2.7 vs 1.1%)であった。術前因子では、米国はステロイド投与、緊急手術症例や術前敗血症の頻度が高く、わが国では要介助の頻度が高かった。術後合併症は米国では予期せぬ挿管や人工呼吸管理、また、心筋梗塞や深部静脈血栓症の頻度が高かった。一方、これらの因子や術後合併症と死亡との相関については、両国でほぼ同様な傾向がみられた。今後、背景疾患を統一した解析等を加えることにより、さらに詳細な考察が可能となると考えられた。
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