研究課題/領域番号 |
16K10438
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
山南 将志 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (30438204)
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研究分担者 |
坂井 修 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10298432)
渡辺 太治 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (20448723)
神田 圭一 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60295649)
夜久 均 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50295648)
上 大介 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80415588)
五條 理志 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90316745)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 組織工学 / 小口径人工血管 / 血管移植片 / 結合組織管 / 脱細胞処理 / 異種移植 / 同種移植 |
研究実績の概要 |
組織工学的手法で作製する小口径人工血管の開発を進めている。組織工学には生体外で細胞培養などの技術を用いて移植片を作成する生体外組織工学や、生体内で移植片を作成する生体内組織工学があるが、いずれの手法も細胞を培養して血管構造を作製したり、細胞にコラーゲンなどの細胞外マトリックスを作製させたりするため、移植片作製に数ヵ月を要し、緊急手術への対応は困難である。そこであらかじめ別の動物体内で移植片を作製・保存することにより、緊急手術にも対応可能な血管移植片を開発することを目的とした。 ビーグル犬皮下にシリコーン円柱基材を1ヵ月間埋入し作製した結合組織管を界面活性剤及びDNA分解酵素を灌流させ脱細胞処理を行った。組織学的評価及びDNA定量にて確実に脱細胞が行われていたことを確認した。また脱細胞前後で引張強度に有意差はなく、処理により結合組織管の強度が損なわれることはなかった。脱細胞処理した結合組織管は1週間冷蔵保存した後にラット腹部大動脈へ異種移植した。移植後の移植片は良好に開存し、1ヵ月後に摘出したところ内腔面は非常に平滑であった。組織学的評価ではグラフト壁内に宿主由来の細胞浸潤が見られ、内腔面には新生内膜の形成が見られた。α-SMA陽性細胞や内皮細胞が層状に形成され移植後早期に血管壁再構築が行われていたことが分かった。 異種由来だけでなく同種由来移植片の実験も行った。ビーグル犬皮下で同様の手法で作製した結合組織管を脱細胞処理及び冷凍保存し、別のビーグル犬頸動脈前壁へパッチ移植を行った。移植後1週、2週、4週で摘出したところ、経時的にパッチ内腔面が新生内膜で裏打ちされていた。組織学的評価でパッチ壁内に細胞浸潤を認め、4週の時点で内腔面に内皮細胞層の形成が確認された。 このように生体内組織工学技術に脱細胞処理を加えることで、あらかじめ作製し保存可能な血管移植片としての利用が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
生体内組織工学技術に脱細胞処理を加えることで、異種由来および同種由来の動物移植モデルが作成できた。移植後の経過、摘出後の組織学的評価においても良好な結果が得られている。動物移植実験においては、あらかじめ作製・保存可能で緊急手術にも対応可能な血管移植片開発という目的の達成に近づいていると言える。 しかし、脱細胞処理後の移植片の強度の評価が現時点では引張強度のみが行えている状態で、強度測定評価としては不十分と言える。強度測定においては人工血管の初期性能評価方法の国際ガイドライン(ISO 7198)を参考に破裂圧試験や糸引掛け試験などを行い、移植片の強度における信頼性を評価する必要がある。 当初予定していた3年間の研究期間内にこれらの評価が十分に行えなかったため、研究期間の延長を許可いただき力学的強度測定を中心に研究を継続することとなった。このため研究はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は同種由来脱細胞処理血管移植片の動物移植実験モデルの作成にも成功し、異種由来および同種由来の血管移植片の動物移植実験はおおむね順調に行うことができたが、脱細胞処理後の耐圧性や糸引掛け試験などの強度測定については評価ができておらず、研究期間の延長を要することとなってしまった。 力学的強度の評価方法については人工血管の初期性能評価方法の国際ガイドライン(ISO 7198)を参考に行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物移植実験は予定通り施行でき良好な結果が得られたが、予定していた力学的強度測定の方法の検討や準備に時間がかかり、強度測定実験を行うことができなかった。このため次年度使用額が生じた。 次年度は力学的強度測定実験に関する費用を中心に助成金を使用する予定である。
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