本研究は、研究期間内に“劇症肝不全に対するAPOLTにおいて、自己温存グラフトの肝細胞テロメア長測定が、機能回復予測の定量的指標になり得るか?”を解明するために行った。King's college hospitalとの共同研究であり、関連研究として”King's collegeにおける乳児肝移植症例の検討”を行い、3か月未満児と3か月~6か月児での肝移植結果に差が無い事を明らかにした(”Outcomes of Liver Transplantation in Small Infants.”Liver Transpl. 2019 25(10):1561-1570.)。劇症肝炎肝での残存肝細胞の極端な減少、極めて強い炎症反応により背景肝の変性によるFISH検体でのTelomere length測定が困難であることを解決するために、Mantraマルチスペクトル組織切片定量解析ワークステーションを使用した測定法も構築した。その結果、APOLT後にImmunosupressant freeとなった症例群(without IS群)のTelomer lengthは、Immunosupressantの継続投与を余儀なくされている群(with IS群)よりも長い傾向があった。(without IS群: 0.976 vs with IS群: 0.678、p = 0.075)H.E.標本でのHepatocyte残存率はwithout IS群では、5%以下が60%、10-20%が20%、70%が20%、with IS群では、5%以下が40%、10-20%が20%、70%が40%であり、H.E.による病理診断に比し、Telomere lengthがAPOLT後の機能回復予測の定量的指標になり得る可能性が示唆された。現在、論文作成を行っている最中である。
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