研究課題
ドナー不足が深刻な本邦の脳死膵移植では海外でいわゆるマージナルドナー(年齢≧45歳、血圧不安定など)と言われるドナーからの移植が約60%である。従って、移植後の膵機能の温存、維持は非常に重要な課題である。以上を背景に、本研究の目的は、膵移植後の周術期に人工膵臓を用いることにより、血糖を厳密にコントロールし、①β細胞のresting効果の検討 ②膵移植至適ドナー基準の模索 ③周術期合併症の検討 の3点について、検討することである。2018年度は当施設において、10例の脳死膵臓移植を行い、全例で本試験に登録することができた。目標症例数の30例には到達しなかったが、現在までに21例の症例を本研究に登録した。①β細胞のresting効果の検討:人工膵臓使用群の移植後1ヶ月目に行ったグルカゴン負荷試験では、ΔCPRの中央値は2.61(1.43-4.97)ng/mlと良好なインスリン分泌能を認めた。また移植後3ヶ月目のHbA1cの中央値は5.0(4.5-6.2)%であり、良好な耐糖能を維持出来ている。②膵移植至適ドナー基準の模索:人工膵臓装着による術後のモニタリングにより、いわゆるマージナルドナーからの膵移植では移植後のインスリン必要量が多いことが明らかになりつつある。本邦では年齢≧50歳、死因が脳血管障害、HbA1c≧5.6%、血清Cre≧1.5mg/dl、CRP≧25mg/dl、血清Na≧150mmol/lのドナーからの膵臓移植で移植後のインスリン分泌能が有意に低下することが明らかとなり、国内外の学会にて報告し、論文化を進めているところである。③周術期合併症の検討:コントロール群との比較となるため、目標症例に到達後の検討となる。今後、目標症例数の30例に到達するよう、試験期間の延長を行い、解析を行う予定である。
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