研究課題/領域番号 |
16K10447
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
浅野 賢道 北海道大学, 大学病院, 特任助教 (10756688)
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研究分担者 |
平野 聡 北海道大学, 医学研究院, 教授 (50322813)
土川 貴裕 北海道大学, 大学病院, 講師 (50507572)
中村 透 北海道大学, 医学研究院, 助教 (70645796)
平岡 圭 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (10719587)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 膵癌 / 消化器外科 / 外科 |
研究実績の概要 |
膵癌の新規バイオマーカーとしての可能性を検討するため、膵癌患者の血清および切除検体、臨床情報の集積をさらに行った。平成29年3月までに40症例の検体や臨床情報が入手可能であり、残りの症例集積を行った(集積予定症例数:50症例)。入手した切除検体でのTK-1タンパク質の発現をtissue microarray(TMA)法を用いて解析した。また、TK-1発現と予後の関係を明らかにするために極めて重要である臨床情報のデータベースを確立した。解析の結果、TK-1タンパクが高発現であった膵癌症例は約半数であり、予後との関連を見出すことはできなかった。このため、TK-1の膵癌早期診断マーカーやサロゲートマーカーとしての有用性を探るべく、未治療膵癌患者の血清TK-1活性の検討も追加した。 前年度に引き続き、膵癌細胞株におけるFTDの細胞増殖に与える抑制効果に関する解析も行った。mRNAおよびタンパク質ともにTK-1高発現である膵癌細胞株はPCI43p5、Panc1であることは前年度のreal time PCRおよびwestern blotting assayを用いた研究で確認しており、本検証に関して現在、至適投与濃度・投与時間を決定すべく、各パラメーターの条件を細かく設定し、検討している。 これまでの研究結果で、TK-1タンパクの発現が低い症例が一定程度、存在することが確認されており、これらの症例ではFTDが無効である可能性が高い。腫瘍選択的増殖型レトロウイルスベクターを用いてtk-1遺伝子を膵癌細胞に導入し、TK-1タンパクの発現を高めることが解決の糸口になると考えられた。われわれは、MLV由来の増殖型ウイルスベクターを用いたこの実験系をすでに確立しており、TK-1タンパク低発現である膵癌細胞株での検証も並行して進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
症例集積が遅々として進まず、切除検体のTMAによるTK-1タンパクの発現解析にも遅れが生じた。検討の結果、膵癌組織中にTK-1タンパクが強く発現していたものは約半数にとどまり、臨床情報と統合したが予後との関連は見出すことができなかった。このため、TK-1の早期診断マーカーやサロゲートマーカーとしての可能性を探るためにパイロット的に未治療膵癌患者の血清TK-1の測定も行った。以上より、膵癌細胞株PCI43p5、Panc1を用いたFTDのTK-1細胞内活性抑制効果の検証実験も遅れる結果となり、また、条件設定の困難さもあり公表可能な結果を得るには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度から引き続き、膵癌細胞株でのFTDの細胞増殖に与える影響についての実験を進め、至適投与条件(濃度、時間)の設定を急ぎ行う。これらの実験結果を基にして、FTD・TPIを用いた動物実験を開始する。また、本研究において膵癌組織中のTK-1タンパクの発現が約半数で認められない、または発現はしているがきわめて弱いということが明らかとなった。TK-1発現のみられない症例、または弱い症例ではFTDが無効である可能性がある。このため、腫瘍選択的増殖型レトロウイルスベクターを用いてtk-1遺伝子を膵癌細胞に導入しTK-1強発現細胞株の作成を行い、FTDにおける細胞増殖抑制効果も検討する。
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