研究課題/領域番号 |
16K10449
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
瀬谷 和彦 弘前大学, 医学研究科, 助教 (40281919)
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研究分担者 |
古川 賢一 弘前大学, 医学研究科, 准教授 (20165468)
福田 幾夫 弘前大学, 医学研究科, 教授 (50344594)
大徳 和之 弘前大学, 医学部附属病院, 准教授 (50374822)
村上 学 弘前大学, 医学研究科, 教授 (80302090)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 大動脈弁狭窄症 / 異所性石灰化 |
研究実績の概要 |
高齢者に好発する大動脈弁狭窄症は弁の異所性石灰化が重篤化に寄与し、弁置換術しか選択肢がない。高侵襲性のため弁置換を受けられない患者も多く、保存的薬物治療法の開発への期待が大きい。 平成28年度は異所性石灰化の引き金となる未分化細胞の同定を目標とした。まず、摘出大動脈弁から得た間質細胞(HAVICs)が間葉系未分化細胞としての特徴を持つことを確認した。HAVICsからCD34陽性及び陰性細胞を選別して石灰化能を調べ、高リン酸条件下でCD34陰性細胞が易石灰化性であることを見出した。さらにDNAマイクロアレイにより両細胞間の石灰化関連遺伝子発現を解析し、CD34陰性細胞で骨吸収を調整しているタンパク質、Wnt5aや脳性ナトリウム利尿ペプチド、陽性細胞では平滑筋転写因子、GATA5やテネイシンXの転写因子、TNXBが高発現していることを見出した。 一方、腫瘍壊死因子(TNF)-α誘発性HAVICs石灰化においてマトリックスGlaタンパク質(MGP)遺伝子の発現が著しく低下するという知見も得た。MGPはCD34陽陰性細胞間の遺伝子発現解析で差を認めなかったが、骨形成タンパク質2(BMP2)アンタゴニストであり、石灰化抑制作用が知られている。そこで、MGPの病態生理学的意義の解明も同時に検証した。その結果、MGP過剰発現HAVICsがTNF-α誘発性石灰化を著しく抑制し、さらにMGP低発現HAVICsが自発石灰化を起こすことを確認した。現在、MGPを含む標的タンパク質について陽陰性細胞の選別やCD34陽陰性細胞における発現の差をタンパク質レベルで調べている。 また、HAVICs異所性石灰化を抑制する活性物質の探索も行い、強心作用が知られている呉茱萸成分に高リン酸誘発性HAVICs石灰化抑制作用を認めたので論文誌に発表した(J Pharmacol Sci. 2016;131:51-57)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回、遺伝子発現解析でHAVICs石灰化に関与する標的タンパク質を特定できた。さらに、MGPが発現解析では差を認めなかったものの、TNF-α誘発性HAVICs石灰化のキーレギュレーターとしての役割を果たしていることを明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度以降は、MGPを含む標的タンパク質のCD34陽陰性細胞におけるタンパク質レベルでの発現変化を調べ、さらにそれぞれのタンパク質の低発現及び過剰発現細胞を作成し、石灰化能をより詳細に検討していく。これにより石灰化に関わるタンパク質をさらに絞った上で細胞選別を行い、原因細胞を特定する。特定後、原因細胞の石灰化誘発に至る分子機構や病態生理学的意義を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
学内予算で購入済みの消耗品類で十分対応できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
実験に使用するタンパク質やその抗体等新規に購入する必要がある高額消耗品類があり、これらの購入費用に充てたい。
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