研究課題
セリンプロテアーゼインヒビターの一種であるMaspinは、癌の進展に伴って発現が減少する遺伝子として単離され、癌抑制遺伝子であると考えられてきた。申請者らは、Maspinの細胞内局在に着目して、乳癌患者の予後とMaspin細胞内局在の関連を解析し、Maspinが癌細胞の細胞質のみに発現している患者は予後不良であることを報告してきた。申請者らの研究から、癌組織に発現するMaspinは癌抑制遺伝子と癌遺伝子の相反する2種類の機能を有していると推測されるが、細胞質に発現しているMaspinが乳癌の進展にどのように関与しているかは明らかになっていない。乳癌におけるMaspinの核移行破綻による細胞質局在化の原因を明らかにし、細胞質局在型Maspinが乳癌の発生・進展にどのように関わっているかを解明する為に、本年度は以下の検討を行った。① 乳癌細胞株を用いた解析によって、細胞質に発現しているMaspinの増加は、一部の乳癌細胞株が有する細胞浸潤能を亢進させることを明らかにした。また、網羅的遺伝子発現解析によってMaspin高発現株で発現変動する34遺伝子 (2倍以上高発現: 23遺伝子、0.5倍以下低発現: 11遺伝子)を同定した。② Maspin高発現による細胞浸潤能の亢進メカニズムとして、プロテオグリカンの一種であるSerglycin (SRGN)の発現増加、TGF-βシグナルの活性化およびEMT関連因子であるSanil、Slug、ZEB1、ZEB2の発現増加が関与していることを明らかにした。
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