研究課題/領域番号 |
16K10461
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
大坪 竜太 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (80570043)
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研究分担者 |
中島 正洋 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (50284683)
矢野 洋 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (50380887)
永安 武 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80284686)
馬場 雅之 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 研究協力員 (90771957)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 甲状腺乳頭癌 / リンパ節転移 / Semi-dry dot-blot法 |
研究実績の概要 |
本研究では、入割したリンパ節の洗浄液中の蛋白を用いて転移を診断する新規手法であるSemi-dry dot-blot(以下、SDB)法を甲状腺乳頭癌のリンパ節転移診断に応用する。これまでSDB法を乳癌と肺癌に適応し、乳癌では感度 93.3%・特異度 96.9% ・一致率 96.6%、肺癌では感度 94.7%、特異度 97.7%、特異度 97.3%と全て90%を超える良好な成績を得た。これを基にSDB法のイムノクロマトグラフィーへの適応を行い、乳癌における診断キットを作成した。臨床検体による評価を行い、論文を作成した(現在査読中)。また、長崎大学 腫瘍外科と企業が連携し市販化を目指している。 現在までに甲状腺乳頭癌 31症例から136個のリンパ節を採取し、リンパ節を最大割面で二分割し、リンパ節を洗浄した液体に含まれる細胞から蛋白を抽出する。一方洗浄を終えたリンパ節は通常の病理組織診断に提出し、洗浄液を用いたSDB法と病理組織診断の診断を比較した。なお、SDB法に使用する抗体は現在3種類を予定しているが、昨年度は汎サイトケラチン(癌を含めた上皮細胞成分)に対する抗体 AE1/AE3と甲状腺濾胞細胞成分に対する抗体 サイログロブリン抗体を用いたSDB法を施行した。 AE1/AE3によるSDB法と永久病理標本との比較では、感度 33%、特異度 100%であった。一方、サイログロブリン抗体と永久病理標本との比較では、感度 58%、特異度 95%であった。乳癌、肺癌に対するSDB法と比較して感度が低い事は明らかである一方、特異度はともに非常に高かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本来の予定では3つ抗体(AE1/AE3、サイログロブリン抗体、TTF-1抗体)によるSDB法の評価を行い、偽陰性症例に対しては病理組織標本を用いた免疫染色とELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)によるターゲット蛋白の濃度測定を行い、乳頭癌リンパ節標本における蛋白発現の評価を予定していたが、2種類の抗体によるSDB法の評価に止まっている。 しかし、標本採取は比較的順調であり、本年度に予定している進捗状況に到達できるものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針として、3種類目の抗体 TTF-1によるSDB法の評価を予定しており、偽陰性症例に対しては病理組織標本を用いた免疫染色とELISAによるターゲット蛋白の濃度測定を行い、乳頭癌リンパ節標本における蛋白発現の評価を行う。なお、甲状腺乳頭癌リンパ節は他癌腫のリンパ節と比較してサイズが小さく、洗浄による細胞採取が十分でない可能性がある。そのため、今後は洗浄液中の細胞数の評価を追加する予定である。 これらの結果を基に最適な抗体の選定を行い、乳癌と同様のイムノクロマトグラフィーに応用したリンパ節転移診断キットの作成を目標としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度と本年度にELISAを予定していたが、検体採取と実験の遅れにより次年度使用額が生じたと判断する。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度はELISAとTTF-1による評価を行い、その蛋白濃度と感度・特異度・一致率を考慮した適切な抗体選定を予定しており、キットと抗体の購入に充てる予定である。
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