研究実績の概要 |
甲状腺分化癌の予後は良好であるが、未分化癌はきわめてヨガが悪く、様々な癌の中でも非常に悪性度の高い癌として知られている。甲状腺未分化癌の特徴としてサイログロブリン、サイロイドペルオキシダーゼなどの甲状腺分化マーカーやNkx2-1、Pax8などの転写因子の発言が低いことが知られている。本研究ではマウス甲状腺Side Population (SP)細胞が甲状腺幹細胞の性質を持つことを明らかにし、さらにその細胞株であるSide Population Cell-derived thyroid cell line (SPTL)を樹立した。このSPTLと甲状腺未分化癌の遺伝子発現プロファイルを解析し、共通に発現上昇する遺伝子としてSnai2, Twist1, Vimentinが、共通に遺伝子発現低下する遺伝子としてTshr, Tpo, Nkx2-1, Foxe1が抽出された。SPTLにドキシサイクリン誘導型のNkx2-1強制発現細胞株を作成し、Nkx2-1を誘導するとAKTのリン酸化が確認できた。さらにTGF-βに対する反応性の変化もみられ、Nkx2-1が分化誘導の重要な転写因子であることが示唆された。Nkx2-1の甲状腺濾胞形成の役割を解析するためにNkx2-1(fl/fl);TPO-creマウスを用いて解析した。このマウスの甲状腺組織を観察すると気管近くにNKX2-1陽性、PAX8陰性、サイログロブリン陰性の濾胞を形成しない細胞群がぞんざい氏、SPTLの発現パターンと似ていることから、この細胞群が甲状腺幹細胞の可能性があると推測された。SPTLではNkx2-1強制発現によりAKTのリン酸化が確認できたが、Nkx2-1(fl/fl);TPO-creマウスの濾胞を形成しないNKX2-1陽性の細胞群ではAKTのリン酸化が確認でき、分化にAKTのパスウェイが関連することを明らかにした。
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