膵島移植は1型糖尿病に対する治療法として実施されている。膵島細胞は、精製の過程で受ける、酸化ストレス、虚血、小胞体ストレスなどに対して、脆弱な細胞である。そのため、膵島分離から移植までに、細胞の喪失やインスリン分泌低下が生じ、治療成績に影響を与えている。一方、近年膵島細胞の生存には小胞体ストレスが深く関わっていること、インスリン分泌においてユビキチンープロテアソームシステムが関与していることが示されている。膵島分離、培養、単離、シート作成の各ステップでの小胞体ストレス反応について、分子生物学的手法を用い明らかにする。各ステップで小胞体ストレス応答の制御を加えれば細胞死を回避し、どのストレスで負荷がかかるか明らかにするための実験を継続した。細胞移植の基礎実験として、分泌系細胞シートの作成とシート化した細胞の機能評価を目的とした。 細胞培養および回収時の小胞体ストレス関連研究を行う前段階として、培養細胞(間葉系幹細胞)を用いて、シート化細胞の評価モデルを作成した。細胞培養室にて間葉系幹細胞を2週間培養後、細胞を回収し、温度応答性培養皿(Up Cell)に播種して細胞シートを作成した。播種3日後、Cell Shifter にて細胞シートを回収し、ゼラチンゲル上に転写した。作成過程の条件による細胞の状態を光学顕微鏡で観察し,主に重積シート作成の条件を決定した。完成したモデルを用いて、培養、単離、シート作成によって小胞体ストレスシグナルがどのように活性化するかをWestern blot法で解析し、小胞体ストレスセンサーとして同定されている3種の小胞体膜貫通タンパク質(IRE1アルファ、PERK、ATF6)それぞれの上流、下流のタンパク質発現の変化を検討している。
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