研究課題/領域番号 |
16K10473
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
有馬 好美 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (20309751)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 乳がん / 不均一性 |
研究実績の概要 |
がんはゲノム的にも形質的にも多様であり、異なる性質を持つ不均一ながん細胞の集団と、その微小環境で構成される複雑な組織であることが知られている。腫瘍内不均一性(intratumor heterogeneity)は、がんのさらなる悪性化を誘導し、治療を困難にする原因となるため、がんの不均一性を標的とした治療法の開発を目指して本研究を行っている。がん組織内の不均一性がどのような機序で、乳がんの悪性度または治療抵抗性に関与するか解明できれば、今後の乳がん治療に大きく貢献できると考えられる。 これまでに、由来の異なる2種類のヒトトリプルネガティブ乳がん細胞株を混合して、免疫不全マウスの乳腺組織に移植することによって不均一ながん組織を構築した。1種類のヒトトリプルネガティブ乳がん細胞株を用いた時と比べて、2種類のヒトトリプルネガティブ乳がん細胞株を混合した場合にはより大きな腫瘍が形成された。この不均一ながん組織において、異なる性質を持つがん細胞間の相互作用が腫瘍の増大に関与する可能性が考えられたため、次世代シーケンサーを利用したRNA-seq法により解析を行い、不均一ながん組織において特徴的に発現する遺伝子群を見出した。 当該年度においては、臨床サンプルを用いてそれぞれの遺伝子によってコードされるタンパク質の発現を解析した。また、見出した遺伝子群についてそれぞれの遺伝子の過剰発現細胞株を樹立し、それらの細胞をマウスに移植して機能解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次世代シーケンサーを利用したRNA-seq法により見出した「不均一な乳がん組織に特徴的に発現する遺伝子群」について、それぞれの遺伝子の機能解析を行うとともに、これらの遺伝子の発現がどのようなメカニズムによって調節されているか上流シグナルについて検討を行っているところである。乳がん患者の手術サンプルを用いて免疫組織染色を行ったところ、これらの遺伝子がコードするタンパク質の発現が確認できたことから、見出した因子が不均一性のバイオマーカーとなる可能性が考えられ、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
異なる性質をもつがん細胞間の協調メカニズムを解明し、がん組織の複雑性と乳がんの悪性度および治療抵抗性との関係について明らかにするために、引き続き候補因子の機能解析を進め、乳がんの臨床サンプルを用いて候補因子の免疫組織染色像と悪性度および治療抵抗性の関連について解析する。見出した候補遺伝子群の発現を調節する上流シグナルを特定し、不均一性がんとの関連を追究する予定である。
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