研究課題/領域番号 |
16K10474
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
高橋 麻衣子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (50348661)
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研究分担者 |
関 朋子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (70528900)
林田 哲 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (80327543)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 乳がん / エストロゲン受容体 |
研究実績の概要 |
ER陽性進行再発乳癌の内分泌治療後の転移巣の検討では、32%において遺伝子変異が認められ、エストロゲン非存在下でERの活性が恒常的に認められることから、内分泌治療耐性のメカニズムの一つであると考えられている。cyclinD1はERによって転写促進されることから、我々はCDK4/6阻害剤がERの下流を効率的に阻害する効果があり、ERの遺伝子変異を同定することで、薬剤の効果を予測可能であるとの仮説を立て、これを検証することが目的である。 まず、複数のER陽性/HER2陰性細胞株のER遺伝子に既知の遺伝子変異を作成し、E2非存在下でのER活性が報告通り亢進するか否かの検証を行うために、MCF7細胞に3種類のER変異プラスミドを導入し、クローン化した。変異部位は、すでに文献上報告されている 1) Leu536Arg, 2) Tyr537Ser, 3) Asp538Glyのアミノ酸であり、この3種類についてそれぞれのクローンを作成した。これらに対して、増殖能力、タモキシフェン・フルベストラントへの増殖抑制効果に対する感受性、Estrogen Responsive Element (ERE) luciferase法によるエストロゲン受容体活性の評価、上記薬剤によるERE luciferase活性への影響を評価、ERの標的遺伝子であるcyclinD1の発現検討を行い、タモキシフェン存在下においてこれら変異ERクローン株では増殖が阻害されないことを示した。一方で、予測ではcyclinD1の発現亢進が認められると考えていたが、こちらについては変化を認めず、その下流のRBタンパク質のリン酸化に正常ER株と比較して差異が認められた。今後はこれらの知見をさらに深めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに研究に必要なクローンの作成を終えており、これらの検討から分子生物学的な複数の知見が得られているなど、研究の土台は確立されている。また、ER変異細胞株について、cyclinD1, CDK4/6の発現解析。さらにRB蛋白とそのリン酸化の状態、遊離E2F1の増減についての検証が進められており、タモキシフェンのみなならずフルベストラントを添加した状態で、どのような変化が生じるかの検討に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では慶應義塾大学病院において蓄積された再発巣生検検体約60例を対象として、ERのAF-2ドメインに対するディープシーケンスを行い、日本人において特有の遺伝子変異が認められるか否かを今後検証していく予定である。すでにAF-2ドメインを構成するER遺伝子のexon4からexon8までのプライマーデザインを設定し、針生検検体のパラフィン包埋切片から抽出したgDNAをテンプレートとして、PCRによる増幅が確認された。これらサンプルはMiSeq Reagent Kit v3 (Illumina)を用いてシーケンスライブラリーの作成を行う予定である。 解析に使用するサンプルを採取した患者の臨床データは全て揃っており、変異の有無と病勢についての統合解析を行う。特に、ホルモン治療・化学療法の前治療数・検体採取直前の治療薬とその病勢・採取直後の治療薬とその効果判定、について注目して解析を行い、ER遺伝子変異の有無と相関が認められるかを検証していく。これらについての倫理申請はすでに行っており、当院の倫理委員会において認められた。
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次年度使用額が生じた理由 |
適正な使用を行った結果端数が発生した
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品費として適正に使用する予定である
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