研究実績の概要 |
我々はCDK4/6阻害剤がERの下流を効率的に阻害する効果があり、ERの遺伝子変異を同定することで、薬剤の効果を予測可能であるとの仮説を立て、これを検証することが目的である。 まず、複数のER陽性/HER2陰性細胞株のER遺伝子に既知の遺伝子変異を作成し、E2非存在下でのER活性が報告通り亢進するか否かの検証を行うために、MCF7細胞に3種類のER変異プラスミドを導入し、クローン化した。変異部位は、すでに文献上報告されている 1) Leu536Arg, 2) Tyr537Ser, 3) Asp538Glyのアミノ酸であり、この3種類についてそれぞれのクローンを作成した。これらに対して、増殖能力、タモキシフェン・フルベストラントへの増殖抑制効果に対する感受性、 Estrogen Responsive Element (ERE) luciferase法によるエストロゲン受容体活性の評価、上記薬剤によるERE luciferase活性への影響を評価、ERの標的遺伝子であるcyclinD1の発現検討を行い、タモキシフェン存在下においてこれら変異ERクローン株では増殖が阻害されないことを示した。一方で、予測ではcyclinD1の発現亢進が認められると考えていたが、こちらについては変化を認めず、その下流のRBタンパク質のリン酸化に正常ER株と比較して差異が認められた。さらに、1)タモキシフェン単剤、2)フルベストラント単剤、3)フルベストラント+CDK4/6阻害薬、の3種類の薬剤の組み合わせにおいて、ER変異クローンでは1)に対して薬剤抵抗性を認めたが、一方で2)および3)については良好な殺細胞効果が認められた。さらに、3)については薬剤の相乗効果を認め、RBリン酸化の効率的な阻害効果と、E2F1蛋白の発現低下が誘導された。これら知見をもとに、CDK4/6阻害薬の薬剤抵抗メカニズムの解明を今後目指していく。
|