研究課題
化学療法・放射線療法は、腫瘍細胞に、細胞死や細胞老化(治療誘導性細胞老化;以下、TIS)を誘導する。どちらも腫瘍の縮小や無憎悪につながるので、レスポンスとして同列に捉えられることも多いが、老化腫瘍細胞は生き残り、再発や耐性がんの出現につながる。この老化細胞を除去する治療の開発を狙いとして、下記に取り組んだ。前年度において、老化細胞にてNAD合成代謝が亢進していることが示唆されたこと、海外にてNAD合成阻害剤を用いた臨床試験が開始されたことなどをふまえ、老化細胞におけるNAD代謝に着目した。NADは合成-分解のターンオーバーが著しく、絶対量の多寡が、必ずしも合成系の活性に一致しない。この点について、新たなアッセイ系を開発して評価することをこころみた。安定同位体NAD合成前駆体と質量分析を組み合わせたNAD合成のフラックス解析系の開発を行った。NAD合成経路としては、サルベージ経路とde novo経路の大きく二つの経路が存在する。このうちまずサルベージ経路について、15N標識前駆体を用いた解析を行なった。前駆体添加後の培養時間の最適化を行い、異なる質量分析手法を用いた際の各種関連代謝産物の定量限界等を各々検討した。サルベージ経路とde novo経路をそれぞれ担う酵素の発現を抑制する網羅的なノックダウン実験を行い、腫瘍細胞のNADプールはサルベージ経路への依存が強い事、de novo経路の貢献は比較的少ないことを確認できた。サルベージ経路の基質であるPRPPはペントースリン酸経路から供給されることをふまえ、グルコース由来炭素がNAD骨格に取り込まれているかの検証をこころみた。
2: おおむね順調に進展している
臨床検体解析の進展が当初想定を若干下回ったが、培養細胞を用いた解析が想定以上に進展したため、全体としては概ね順調といえる。
前年度の結果を踏まえつつ、引き続き、計画にしたがい、TISを新規治療標的として開発する。
・消耗品費を当初想定よりも抑えられたため・次年度の消耗品費に上積みし、効率的に計画を進める。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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