【研究の概要】がん患者の末梢血循環腫瘍細胞(CTC)を分離しEMTを検証することは、がん患者の予後と治療効果の予測および治療抵抗性のメカニズムを知るうえで重要である。現在CTCについてCellSearch systemを用いた解析から、CTC数が乳がんの予後予測に役立つことが報告され、米国FDAが対外診断用医薬品として承認している。しかし、このシステムは上皮細胞接着分子(EpCAM)発現細胞を抗体で分離するため、EMTを起こしたがん細胞は検出できない。我々はClearCell systemを用いて、サイズ分画によるCTC測定およびEMT解析について研究を計画した。【研究の経過】当初使用していたClearCellはCXからFX1 systemへと改良され次代の機器に変更された。このためFX1 systemを使用し再度乳癌患者の末梢血よりCTCを回収し引き続き新たに検討した。早期および再発乳癌患者7名と健常人7名の末梢血で解析を行った。サイトケラチン陽性・CD45陰性細胞は7名の患者全例に検出されたが、健常人では検出されなかった。5名の患者検体で同時にCellSearch systemでも測定したが、サイトケラチン陽性・CD45陰性細胞は検出されなかった。ClearCell FX1ではCX systemでの疑陽性細胞の課題が改善され、CellSearch systemよりCTCの検出に優れた方法であることが示唆された。また、回収したCTCの検討ではEpCAMおよびvimemtin陽性の細胞を認めており、本システムを用いて上皮間葉転換を起こしたCTCを検出が期待できる。現在、治療前後におけるCTCとEMTについて治療前後での変化を検証している。この他、CTCにおける内在性PP2A阻害タンパク質SET蛋白について発現を解析している。
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