研究課題/領域番号 |
16K10491
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
市川 寛 新潟大学, 医歯学系, 助教 (50721875)
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研究分担者 |
永橋 昌幸 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (30743918)
若井 俊文 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50372470)
羽入 隆晃 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (50719705)
小杉 伸一 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任教授 (90401736)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 食道扁平上皮癌 / スフィンゴシンキナーゼ1型 / 免疫組織化学染色 / リンパ行性進展 |
研究実績の概要 |
本年度は、2000年から2008年までに食道扁平上皮癌に対して食道切除術を施行した症例のうち、術前治療を施行していない96例を対象とし、スフィンゴシンキナーゼ1型のリン酸化状態(pSphK1)を免疫組織化学で評価して臨床病理学的因子や患者予後との関連について検討した。 方法:前年度の検討からTris-EDTA緩衝液(ph9.0)にて抗原の賦活化を行い、pSphK1抗体(1:100)は4℃にて一晩反応させた。血管内皮細胞の染色強度より弱い染色を1+、同程度の染色を2+、強い染色を3+と定義した。浸潤先進部にて染色強度を評価し、2+以上を高発現と定義した。 結果:pSphK1高発現群61例(63.5%)は低発現群35例(36.5%)と比較して有意に病理学的リンパ節転移(pN0/1/2/3)が高度であった(16/20/14/11例 vs. 25/6/3/1例、P<0.01)。リンパ管侵襲陽性(67.2% vs. 17.1%、P<0.01)、壁内転移陽性(26.2% vs. 2.9%、P<0.01)はpSphK1高発現群において有意に頻度が高かった。多変量解析ではリンパ管侵襲陽性が独立してpSphK1高発現に関連していた(odds ratio = 8.45、P<0.01)。pSphK1高発現群の5年生存率はpSphK1低発現群に対して有意に低かった(50.8% vs. 67.3%、P=0.01)。 結論:この結果から、腫瘍組織におけるpSphK1発現は食道扁平上皮癌のリンパ行性進展に関連していることが示唆された。 本研究結果については、13th Annual Academic Surgical Congress (平成30年2月、ジャクソンビル)にて発表した。また、学術論文をJournal of Surgical Research誌に投稿し、現在査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
免疫組織化学染色はおおむね目標の症例数での検討を終えることができた。 食道癌細胞株を用いたin vitro実験系に着手しておらず、やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はD2-40 抗体によりリンパ管を染色し、リンパ管浸潤を正確に評価すると共に、腫瘍周囲のリンパ管新生の評価を行う。また、SphK1全体の発現についても免疫組織化学染色で評価してpSphK1発現との関連を検討する。 以上により、臨床検体におけるSphK1の臨床的意義を解明することを優先して行う。 並行して食道癌細胞株にS1Pを処理し、遊走能や浸潤能の変化を評価し、臨床検体におけるpSphK1とリンパ行性進展の関係を支持する基礎データを取得する。
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次年度使用額が生じた理由 |
臨床検体を用いた免疫組織化学実験を先行し、細胞実験に着手していないことで、若干の次年度使用額が生じた。翌年度分の助成金と合わせて、追加の免疫組織化学用の抗体購入や細胞実験用の費用に充当する。
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