研究課題/領域番号 |
16K10494
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
伏田 幸夫 金沢大学, 医学系, 准教授 (10301194)
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研究分担者 |
原田 真市 金沢大学, 医学系, 助教 (90272955)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 胃癌 / 腹膜播種 / 線維化腫瘍 / MKN45 / 腹膜中皮細胞 |
研究実績の概要 |
胃がん高度腹膜播種形成細胞株MKN45-Pと正常ヒト腹膜中皮細胞 (HPMC)を共培養し、マウス皮下へ移植すると線維化を伴う実臨床に類似した腫瘍を作成可能であったが、新規治療法を開発するにあたって、皮下腫瘍と腹腔内腫瘍(腹膜播種)では、投与された薬剤のデリバリーが全く異なるため、線維化を伴った腹膜播種の作成が急務である。今回、いろいろな条件にてマウス腹膜播種モデルを作成し、腹膜播種のサイズ、重量、線維化の有無について検討した。 【方法】MKN45-PとHPMCを共培養した後、5百万個をA: そのままマウス腹腔内に注入、B: マウスを開腹し、左側壁側腹膜を綿棒でスクラッチした後閉腹し、Aと同様の細胞を腹腔内に注入、C: マウスを開腹し、腸管および腸間膜を綿棒でスクラッチした後閉腹し、Aと同様の細胞を腹腔内に注入、の3つのモデルを作成した。 【結果】①肉眼的検討:A群は結節性の播種を多数形成した。B群はスクラッチした腹壁に浸潤硬化性の播種を形成していたが、腹腔内臓器には結節性の播種を形成した。C群は腹腔内臓器に浸潤硬化性の播種を多数形成していた。②免疫組織学的検討:A群は間質を伴わない充実型であった。B群の腹壁播種はa-SMA産生線維芽細胞様の細胞およびAzan染色で青染されるコラーゲン線維の増生を認めた。C群の腹腔内臓器への播種はB群の所見に加え、腸管への浸潤像を認めた(通常は圧排性)。 【考察】今回、腹膜を綿棒でスクラッチした部位に線維化を伴う浸潤性の播種が形成可能であったことは、初回手術の際の腹部操作で腸管や腹壁を術者が把持、展開して腹膜中皮細胞が剥離され、その部位に術中散布された癌細胞が生着の後、腹膜再発する病態を正確に具現化したものであり、今後の新規治療法の開発に用いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト臨床検体を用いた検討にあたって、対象症例の選定や検体を研究に用いることについての倫理的問題をクリアする手続きに時間を要する。そこで、マウス動物実験モデルの作成を先行した結果、予想以上に早く線維化の増生および浸潤性を示す腹膜播種モデルを作成することに成功した。以前より我々が作成した線維化を伴った皮下腫瘍モデルの応用系であったためと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、作成したモデルにおけるIL-17産生細胞の同定、およびIL-17の抗体を用いて線維化を抑制可能か否かを検討する。 また、臨床検体についても同様な現象が起きていることを証明したい。研究推進に関わる課題は現在のところ存在しない。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会参加に係る費用を、当初の予想よりも節約できたため
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次年度使用額の使用計画 |
次年度分と合わせて、公正かつ有意義に使用する予定である。
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