研究実績の概要 |
①臨床検体を用いた検討では、胃癌腹膜播種70症例を腹膜播種による腸管狭窄症状を伴うA群(29例)と狭窄症状を伴わないB群(41例)の2群に分けて検討した。 胃癌におけるIL-17A 陽性細胞の約70%はMCT陽性細胞(肥満細胞)であった。Azan染色による線維化面積を検討したところ、腸管狭窄群(A群)において有為に線維化の程度が強かった (p<0.001)。さらに、IL-17AとMCTがともに陽性であった細胞数と腫瘍に占める線維化の割合は正の相関 (r=0.42, p<0.01)を示した。 ②in vitro によるIL-17AがHPMCs に及ぼす影響についての検討だは、早期胃がん症例の胃切除の際に採取した大網からHPMCs を分離培養し、IL-17Aを添加し48時間後に蛍光免疫染色にて検討したところ、FAPおよび-SMAの発現を認め、E-cadherin の発現は認めなかった。Western blot においても、Vimentinの発現上昇も加え、同様の結果となった。形態学的にも、敷石状のHPMCsはIL-17A投与によって48時間後には線維芽細胞様の紡錘型を呈した。Migration assayではIL-17A投与後12時間より遊走能に有為差を認め (p<0.01)、invasion assayにおいてもIL-17A投与群において非投与群に比べ有為に浸潤能が更新した (p<0.05)。 考察:胃癌におけるIL-17A産生細胞は肥満細胞が主体であり、IL-17Aによって正常腹膜中皮細胞がEMTを起こしてCAFに形質転換し、腫瘍の線維化や浸潤に強く関与しいていることが明らかとなった。以上より、肥満細胞の脱顆粒を阻害するtranilast などが新しい治療薬となる可能性が示唆された。
|