研究課題/領域番号 |
16K10496
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
森 龍太郎 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 助教 (00738635)
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研究分担者 |
二村 学 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (10415515)
吉田 和弘 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (50230727)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 5FU耐性 / cDNA microarray / メタボローム解析 |
研究実績の概要 |
当研究の目的は、網羅的解析から抗癌剤5FUの耐性機序を解明し、克服することである。技術の進歩により、近年、cDNA microarrayなどの網羅的解析が急速に普及しつつある。これらのAssayは、一度に多数の遺伝子やタンパクなどの発現を解析でき、これまでにも、例えば癌のサブタイプ分類などに臨床応用されていて、有望なAssayである。しかし、網羅的解析により機能解析が成功した例はこれまでになく、また、網羅的解析により、薬剤耐性の克服が成し遂げられた研究はいまだに存在しない。 当教室では胃癌細胞株MKN45とその5FU耐性株MKN45/F2Rを保有しており、これらにおいてcDNA microarrayおよび網羅的メタボローム解析を行った。具体的には、それぞれの細胞株の定常状態と5FU 2µM存在化でサンプルを抽出して網羅的解析を行い、cDNA microarrayでは40304の遺伝子発現が解析対象となり、網羅的メタボローム解析では226の代謝物質が解析対象となった。これらの結果を産業技術総合研究所(産総研)と共同で検討し、数理モデルにより5FU耐性に関与の大きいpathwayの抽出や、耐性を克服する既存薬剤の抽出(ドラッグリポジショニング)を行った。また、その結果から、耐性克服に重要な分子やpathwayについて、MTT assayやWestern blotなどで検証している。今後は、これらの結果が、臨床検体においても妥当であるかを検討し、さらには臨床において5FU耐性の克服が可能であるかを検証していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
5FU活性化の経路として、通説では①Orotate phosphoribosyltransferase (OPRT)による経路、②Thymidine phosphorylase (TP)による経路、③Uridine phosphorylase (UP)による経路が想定されているが、我々のこれまでの検討では5FU耐性株ではOPRT低発現にも関わらず5FUはOPRTによる経路でのみ活性化されている。5FUの活性化には、5FUとその代謝酵素だけではなく、ペントースリン酸回路より生成されるメタボロームが必要であり、①ではPhosphoribosyl pyrophosphate (PRPP)、②ではDeoxyribose 1 phosphate (dR1P)、③ではRibose 1 phosphate (R1P)が必要とされる。今回行った網羅的メタボローム解析の結果では、PRPPは十分に細胞内に存在するが、dR1PおよびR1Pはほとんど存在せず、これにより5FU活性化がOPRT経路に限定されていると考えられた。よって5FU耐性の機序の1つとしてOPRT低発現が強く示唆された。これらの知見が得られたことは、当初の計画通りの進歩状況と考える。
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今後の研究の推進方策 |
網羅的メタボローム解析の結果からは、5FU耐性株と親株で検出された量が違う代謝物がほかにも存在する。またcDNA microarrayを用いたPathway解析の結果からは、5FU耐性に関係していると思われるPathwayの候補が挙がっている。これらをもとにさらなる検討を進める。
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