研究実績の概要 |
分子標的治療の発展と腫瘍免疫学の進歩により腫瘍免疫抑制を解除することが実際に腫瘍制御へ繋がることが示された。また、その腫瘍内における免疫抑制においても“がん微小環境”の強い関与が示唆されている。そこで本研究においては“がん微小環境”の癌関連線維芽細胞(Cancer-associated fibroblasts: CAFs)が腫瘍内免疫抑制へどのように影響を与えているかを解析し、光線免疫抗体療法を用いてCAFsの標的治療を行い遠隔転移など治療困難であった進行癌における革新的な治療法を開発することを目的とする。 H28年度で以下の項目を検討する。消化器癌の臨床検体を用いてCAFsと腫瘍内免疫の相互関係を解析し臨床病理学的に検討する。続いてvitroにて癌細胞とCAFsの共培養による細胞間相互作用を再現し、CAFsの腫瘍免疫抑制作用について検証する。さらにvivoにてCAFs richな腫瘍の腫瘍免疫抑制作用を検証する。 結果としては、臨床病理学的検討において切除標本におけるαSMAの発現量とTILsの浸潤数は有意な相関関係を示した(共にP<0.001)。多変量解析にて腫瘍内のTILsは全生存期間において独立した予後因子であった(CTL: HR=0.45, 95% CI= 0.27-0.77, P=0.004, Treg: HR=1.86, 95% CI=1.05-3.29, P=0.034)。in vitroにおいて、CAFsとの共培養モデルでは癌単独モデルと比べ、IL-6ならびにTGF-βの分泌量が有意に増加していた。さらにIL-6のシグナル伝達分子であるpSTAT3の値は共培養群で上昇していた。in vivoマウス皮下腫瘍モデルでは、線維芽細胞と共接種した腫瘍では、癌細胞単独接種に比べてCD8+リンパ球の浸潤が少なく、逆にFoxP3+細胞が多い結果であった。
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