研究課題/領域番号 |
16K10500
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
白川 靖博 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (60379774)
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研究分担者 |
野間 和広 岡山大学, 大学病院, 助教 (10534761)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 癌関連線維芽細胞 / 食道癌 / リンパ節転移 / 遊走能 / 浸潤能 |
研究実績の概要 |
食道癌切除標本を用いた免疫組織学的検討では,CAFのマーカーであるFibroblast activation protein (FAP)の発現レベルが高い群ではOS,DFSとも に有意に予後が不良であった.またリンパ節転移のある群とない群で比較 を行うと,リンパ節転移ありgroupの方が 有意にFAPスコアが高値であった.リンパ節転移数とFAPスコアの相関関係を検証すると,r=0.448でこれらには正 の相関関係があることが示された.さらにFAP高発現群の予後が不良であった. 食道癌細胞株とCAFのCluster作成および細胞生物学的検討では,正常線維芽細胞であるFEF3は癌細胞細胞株(TE1, TE4)の培養上清で刺激すると,CAFのマーカーであ るSMAやFAPの発現が上昇することがわかったので,活性化されたFEF3をCAFとして使用した.CAF刺激群ではTE1およびTE4は上皮性の性質を失い,間葉系の性質を獲得することがわかった. すなわち,細胞同士の接着が疎になり,細胞極性を失い,より紡錘型の形態へと変化するこ とがわかった. さらに癌細胞の遊走能および浸潤能は線維芽細胞で刺激していない癌細胞と 比較して有意に亢進していることが示された. Western blot analysisではCAF刺激群のTE1およびTE4は,浸潤や転移に関わるとさ れるたんぱく質「MMP2」の発現レベルが上昇していた.In vivoでは食道同所に癌細胞を移植し, その転移の程度をルシフェラーゼ発光にて評価した. 同所移植した癌細胞はリンパ節以外に,肝転移や腹膜播種も引き起こすことがわかった. Control群と比較するとCAF刺激群ではいずれの転移も多かったが,なかでもリンパ節転移は有意 にCAF刺激群で多かった. リンパ節転移の個数の評価ではCAF刺激群で有意にその数が多かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に計画していた食道癌切除標本を用いたCAFsの臨床病理学的検討および食道癌とCAFsのCluster作成および生物学的検討もほぼ予定通りに遂行できており,それなりの成果を得ている.さらに,29年度に計画していたIn vivoの遠隔転移の検討も一部開始できているため.
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今後の研究の推進方策 |
癌細胞のみとCAFs共培養のCluster群の両群に対する抗がん剤刺激による生存率,EMTや幹細胞化,または薬剤耐性に関連する解析を行う予定である.可能であれば機構解析としてknockdown技術を用いて需要分子の同定も行いたい.さらに食道癌細胞に対してHER2を標的としたPITを用いて循環状態での近赤外線による同時治療も検討する予定である. さらに遠隔転移巣に循環CAFsが関与しているかを蛍光免疫染色など組織学的な検討を行い,CAFsの関与率を統計学的に解析する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験消耗品の購入が当初の予定より安くすんだため.
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越しとなった金額は,主に次年度の実験消耗品に用いる予定である.
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