研究課題
【目的】DNAミスマッチ修復異常を呈するMSI-H大腸癌症例におけるPD-L1、CD8陽性細胞、CD68陽性細胞(マクロファージ)の発現を評価し、局在を明らかにする。【対象】1994年から2015年までにMSI検索を行った大腸癌499例のうち、48例のMSI-H症例の中から、組織学検討が可能であった36症例、及びプロペンシティスコアマッチングを行ったMSS/MSI-L 37症例。【方法】抗PD-L1、抗CD8、抗CD68抗体による免疫組織化学染色法を用いて腫瘍浸潤部と正常組織の境界部(Invasive front)と腫瘍内部及び間質(Tumor)でPD-L1、CD8、CD68陽性細胞を評価した。PD-L1は腫瘍細胞と間質に分けて評価した。腫瘍細胞に1%以上の発現を認める場合をPD-L1(T)+、間質に1%以上のPD-L1の発現を認める場合をPD-L1(I)+と評価し、臨床病理学的因子との相関を検討した。CD8・CD68陽性細胞は3視野を選択し各視野での陽性細胞数の平均値を算出した。【結果】MSI-H症例でPD-L1(T)+を36%(13/36)、PD-L1(I)+を72%(26/36)、MSS症例でPD-L1(T)+を5%(2/37)、PD-L1(I)+を27%(10/37)に認めた。MSI-H症例でPD-L1(T)+はPD-L1(T)-と比較し低分化型腺癌、脈管侵襲、リンパ管侵襲が多かった。(P=0.049、P=0.049、P=0.03)PD-L1(I)+はPD-L1(I)-と比較しStageI/IIがStageIII/IVより多かった(P=0.03)。MSI-H症例では、Tumorに比較してInvasive frontの間質に多くPD-L1が発現していた。(平均値4.1%vs10.6%、P<0.005) CD8・CD68陽性細胞もInvasive frontに多数浸潤していた(平均値64.0vs115.4、P<0.001、平均値34.8vs70.8、P<0.001)。蛍光免疫染色にて、MSI-H症例のInvasive frontにPD-L1発現を認め、その多くがCD68陽性細胞であった。
2: おおむね順調に進展している
免疫チェックポイント阻害剤の分子機序として、MSI-H大腸癌の浸潤にマクロファージと免疫チェックポイント分子が関与していることが示され、将来の治療法確立のための基盤となる結果となったため。
消化管癌における標準的集学的療法の有無による各種腫瘍内浸潤免疫担当細胞の定量と、免疫組織学的評価、免疫学的因子と腫瘍のゲノム不安定性、臨床病理学的因子の解析へと展開する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
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