研究課題/領域番号 |
16K10502
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐伯 浩司 九州大学, 医学研究院, 准教授 (80325448)
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研究分担者 |
北尾 洋之 九州大学, 薬学研究院, 教授 (30368617)
沖 英次 九州大学, 大学病院, 助教 (70380392)
中島 雄一郎 九州大学, 医学研究院, 助教 (40733564)
杉山 雅彦 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (40751079)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | トランスレーショナルリサーチ / マイクロサテライト不安定性 / 免疫チェック ポイント阻害剤 |
研究実績の概要 |
【目的】MSI-H大腸癌症例の腫瘍先進部における免疫微小環境を解析し、免疫チェックポイント阻害剤の治療標的となる細胞群を探索する。 【対象】MSI-Hであった大腸癌のうち組織学検討が可能であった36症例、およびプロペンシティスコアマッチングを行った同時期のMSS 37症例。 【方法】免疫組織化学染色法を用いて腫瘍浸潤部と腫瘍内部でPD-L1・CD8・CD68/CD163陽性細胞を評価した【結果】MSI-H症例でPD-L1(T)+を36%、PD-L1(I)+を72%、MSS症例でPD-L1(T)+を5%、PD-L1(I)+を27%に認めた。MSI-H症例では、MSI-H症例では、PD-L1(T)は低分化腺癌、リンパ管侵襲、脈管侵襲と相関を認めた(P<0.05)。また、PD-L1(I)はpStageⅠ/Ⅱ、budding grade2/3と相関を認めた(P<0.05)。免疫系細胞にPD-L1の発現を認める症例がStageIII/IVよりStageI/IIで多く、Budding gradeとも相関を認めた(P=0.017, P=0.043)。MSI-H症例では、腫瘍内部に比較して 腫瘍先進部の免疫系細胞に多くPD-L1が発現していた(P<0.005)。 CD8・CD68陽性細胞も腫瘍先進部に多数浸潤していた(P<0.001、P<0.001)。蛍光免疫染色では、MSI-H症例の腫瘍先進部にPD-L1発現を認め、その多くがCD68/CD163陽性のM2マクロファージであった。 【結論】MSI-H大腸癌の腫瘍進展と免疫回避にPD-L1陽性の腫瘍細胞とM2マクロファージが関与していることが示唆された。腫瘍先進部のPD-L1陽性M2マクロファージは免疫チェックポイント阻害剤の治療標的になる可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸癌では、マイクロサテライト不安定性を高頻度に認める症例(MSI-H)に免疫チェックポイント阻害剤が有効であることが知られている。しかし、免疫チェックポイント阻害剤にどのような種類の細胞が応答しているか特定できていない。本研究により、MSI-H大腸癌の腫瘍進展と免疫回避にPD-L1陽性の腫瘍細胞とM2マクロファージが関与していることが示唆された。腫瘍先進部のPD-L1陽性M2マクロファージは免疫チェックポイント阻害剤の治療標的になる可能性があると考えられ、今後の研究への発展が期待された。
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今後の研究の推進方策 |
(1)マウス固形癌皮下接種モデルにおける各癌腫の標準的集学的療法(放射線化学療法/分子標的薬)と免疫チェックポイント阻害剤の併用療法の奏功性と最適な投与時期の検討、(2)消化管癌における標準的集学的療法の有無による各種腫瘍内浸潤免疫担当細胞の定量と免疫組織学的評価、免疫学的因子と腫瘍のゲノム不安定性、臨床病理学的因子の解析
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