研究課題
私達はこれまでに大腸癌患者の腸内細菌叢においてFusobacterium が健常人よりも多く生息していることを見出した。さらに、切除検体のパラフィン固定標本よりmicrobiome の評価を行い、Fusobacterium が多い症例では大腸癌の予後が不良であることを解明し報告している(Gut 2015)。Fusobacteriumは口腔内に存在するグラム陰性嫌気性桿菌であり歯周病の原因となることが知られている。この報告をもとに、まずは口腔により近い食道癌の臨床検体で、F. nucleatumの検出を試みた。食道癌切除検体325例において、PCR法にて検出した結果、74例(22.7%)にF. nucleatumが検出された。正常組織に比べ癌部でその発現は有意に高く認められた。また進行食道癌ではその発現は高く、有意に予後不良であることを報告した(Clin Cancer Res 2016)。同様の検討を胃癌について行った。胃癌切除検体169症例のFFPE標本よりDNAを抽出した。real time PCR法により癌部のF. nucleatumの存在量を検証した。8例(4.7%)にF. nucleatumの発現を認めた。陽性群では腫瘍径が有意に大きかった。また癌特異的生存率は陽性群で有意に不良であった。
3: やや遅れている
食道癌、大腸癌と比較し、胃癌ではF. nucleatumの検出頻度が非常に低いため、予備実験にかなりの時間を要した。陽性率が予想を下回る結果であったため、さらに症例集積を行い、検討する予定である。次世代シークエンサーを用いた解析は、既知のF. nucleatumのvalidationが終了したのちに着手する予定としている。
胃癌組織におけるF. nucleatumの検出に関しては、さらなる症例集積に加え、予後を含めた臨床病理学的検討を行う。また、胃癌においてはピロリ菌との関連を検討する必要があるため、各サンプルのピロリ菌の有無、除菌の有無などをさらに検討する方針としている。胃癌組織のパラフィン切片からのDNA抽出とPCRによるvalidationの手法が確立した時点で、次世代シークエンサーを用いた網羅的な解析へつなげていく予定としている。
医局保管の試薬等を利用することが出来たため。
研究費は主に試薬などの消耗品購入費に充てるほか、情報収集や研究成果発表にかかる学会出張旅費に充てたいと考える。
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Clin Cancer Res
巻: 22(22) ページ: 5574-5581
10.1158/1078-0432.CCR-16-1786.