研究課題/領域番号 |
16K10508
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
有上 貴明 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 助教 (40527058)
|
研究分担者 |
大久保 啓史 鹿児島大学, 附属病院, 医員 (40772223) [辞退]
上之園 芳一 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 特任准教授 (60398279)
夏越 祥次 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (70237577)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 癌免疫機構 / 好中球リンパ球比 / Fibrinogen / 免疫チェックポイント分子 / 胃癌 |
研究実績の概要 |
癌細胞は、免疫チェックポイント分子を発現することで全身性の炎症反応を惹起し、免疫不均衡をもたらすとの報告もあり、本年度は全身性炎症反応の指標とされるNeutrophil-Lymphocyte Ratio (NLR)と血液凝固因子のFibrinogenに着目した。この現象は、特に進行癌において顕著に見られることから切除不能・再発胃癌を対象とし、血清Fibrinogen値とNLRとを同時に評価したF-NLR scoreの臨床的意義について検討することとした。対象は、切除不能・再発胃癌の診断にて化学療法あるいは化学放射線療法を行った68例であり、治療前1週間以内の血液検体を使用した。血清Fibrinogen値とNLRを測定し、Hyperfibrinogenemia (> 400mg/dL)およびHigh NLR (> 3.0)の症例はF-NLR score: 2、どちらか一方のみ満たす症例をF-NLR score: 1、どちらも満たさない症例はF-NLR score: 0と定義して評価した。治療効果判定では、progressive disease (PD) : 27例 (39.7%)、non-PD : 41例 (60.3%)であった。PD群は、血清Fibrinogenおよび NLRともにnon-PD群より有意に高値であった。またF-NLR score: 0, 1, 2は、それぞれ21例 (30.9%)、25例 (36.8%)、22例 (32.3%)であり、PD群はnon-PD群に比較し、有意に高値であった。さらに予後との関係ではF-NLR score高値例ほど有意に予後不良であり、多変量解析では独立した予後不良因子であった。これらの結果より、切除不能・再発胃癌において癌細胞は全身性の炎症反応を誘発し、宿主の免疫応答を抑制することで治療抵抗性をもたらす可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
免疫チェックポイント分子を発現する癌細胞の免疫抑制機構のメカニズムについて全身性炎症反応の観点から、その臨床的意義も含めて解析し、学会発表およびoriginal articleとして論文発表をすることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究については、胃癌の臨床検体を用いて免疫チェックポイント分子の発現を免疫染色にて解析し、同時にCD3,やCD4, CD8, Foxp3に対する抗体を用いてT細胞性免疫応答に関わる因子の評価も行い、原発巣での免疫チェックポイント分子から見たT細胞性免疫応答の抑制機構を明らかにする予定である。
|