研究課題
本研究は、消化器癌における循環癌細胞(Circulating Tumor Cell: CTC)の標的分子発現解析と分子標的治療薬の効果予測および効率的かつ正確な適応患者の選択法の確立を行い外科治療および化学療法を中心とした癌治療の個別化を図ることである。IsoFlux System(米国Fluxion Biosciences社)は、次世代CTC濃縮システムであり、細胞表面にビーズを結合させ、マイクロ流路の中で均一なフローを形成し、強力なマグネットで、均一なサンプル濃縮をしている。血液サンプルからCTCなど希少細胞(陽性率0.001%以下)をダメージレスな状態で容易に回収することが可能であることが利点である。胃癌および食道癌、膵臓癌を中心として細胞株によるIsoflux システムによる検出系の確立および従来のCellSearchによる検出系との比較を行い、更に分子標的治療の対象となるHER2、VEGFR-2、PDL-1をはじめとするCTCでの分子発現をタンパクおよび遺伝子レベルで発現を評価する手法を確立させる。それと併せて患者末梢血臨床検体を用いた CTCの標的分子発現解析と分子標的治療薬の効果の評価を予測および効率的かつ正確な適応患者の選択法の確立を行う。この研究の最終目的は効率的な分子標的薬剤の適応を非侵襲的にCTCによる判別する方法を確立することにある。分子標的薬剤は、有効な治療法のひとつであるにも関わらず、非常に高価であり患者のみならず医療経済的にも大きな負担となってきている。この研究結果により効果的な治療対象となる患者の選択を可能とすることが、患者利益および社会的利益を実現できるものと考える。
3: やや遅れている
検証を行う中で、IsoFlux SystemによるCTC検出の優越性が確認できず、CellSearchに比べて分離作業までの工程が非常に煩雑であることが、手技の安定化に至っていない原因かと予測された。CellSearchで得られる結果を元にHER2発現については引き続き検証をすすめている。CTCのFISHでの評価についても、安定的な評価が可能となり、タンパク発現の評価と併せて比較検討を行っている。PDL-1について胃癌症例における血液を用いRT-PCR法によりmRNAの評価を行ったところ、早期例に比較して進行例で有意に高く、また深達度、遠隔転移、病期と相関を認めた。PDL-1のmRNA発現が高い症例は、低い症例と比較して有意に予後不良であった。多変量解析にて血中PDL-1のmRNA発現は独立した予後予測因子となることが確認された。CTCにおけるPDL-1発現の評価が、免疫チェックポイント阻害剤の効果予測および適応の選別に有用な可能性がある。
形態学的CTCの評価は、魅力的であることからCellSearchによる評価を可能とする新規CTCシステムの導入も考えたい。併せて今後はCTC検出を形態学的検出に限らずRT-PCR法による評価も加味し、臨床検体への評価を実現することを進める予定である。
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