研究課題
「研究目的」年齢と共に増加する発癌リスクの要因としてゲノム損傷の蓄積が考えられます。その契機は遺伝子複製の際の染色体分配です。正常な染色体分配には染色体のセントロメア領域のメチル化が必須です。セントロメア領域は反復配列であるSatelliteα配列より構成され、そこから転写されるnon-cording RNAであるSatelliteαtranscript(SatA)により染色体の均等分配が司られます。我々はこれまで、セントロメア領域のメチル化異常によりSatAが過剰発現し、特定の染色体を標的として数的異常が生じる事を明らかにしました。この変化は癌部のみならず癌の背景粘膜でも認められ、特に多発癌の背景粘膜で高値を示すことから、SatAは癌の発生母地のゲノム損傷を反映すると考えています。本研究では、加齢に伴う染色体のメチル化異常に着目し、SatAを介する染色体不安定性の標的染色体からゲノム損傷に関わる標的分子を特定します。それを血中モニタリングすることで発癌リスクを経時的に評価するシステムを構築します。「研究計画」細胞株を用いて「Satelliteαtranscript」の遺伝子導入を行い、染色体分配に与える影響としてセントロメア蛋白の発現変化、キネトコア形成に関わる影響、染色体数の変化を検討します。その結果を、臨床検体を用いて検証します。
2: おおむね順調に進展している
これまで、大腸癌細胞株に対してリポフェクション法を用いてSatAをトランジェントに遺伝子導入しています。3、7、16番染色体の増幅はSatAの遺伝子導入によるものと考えられます。7番染色体の増幅は臨床検体を用いた結果と一致しています。遺伝子導入に用いるレンチウイルスはすでに作成され、乳腺上皮細胞株でその発現を確認しています。SatAを乳腺上皮細胞株に導入すると8番及び20番染色体の長椀に増幅が認められました。癌細胞株の実験では、癌細胞株自体がすでに8番染色体の増幅を有していたために、8番染色体の新たな変化は分かりませんでしたが、正常組織に遺伝子導入することで、SatAの標的染色体が明らかになってきています。興味深いことに8番及び20番染色体の増幅は多くの癌で認められており、発癌に関わる責任遺伝子が存在すると考えられます。
SatAの過剰発現が染色体分配の破綻にどのように影響するか検証するために、セントロメア関連蛋白の発現変化を免疫組織染色法でキネトコア形成への影響をFISHで評価します。SatAの過剰発現の背景には、セントロメア領域の脱メチル化異常が背景にあると考えています。SatAを過剰発現させた乳腺上皮細胞株に脱メチル化剤(5-Aza-dC)を投与し、メチル化異常の影響を評価します。
消耗品価格の変動
消耗品購入への繰り越し
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
J Clin Epigenet
巻: 2-2 ページ: 18-27
DOI: 10.21767/2472-1158.100018
World journal of surgical oncology
巻: 14 ページ: 272
10.1186/s12957-016-1027-x
Int J Oncol.
巻: 49 ページ: 1057-1067
10.3892/ijo.2016.3583.