研究課題
RHOA変異あるいはRHOA野生細胞株のRHOAノックダウン細胞と非ノックダウン細胞より回収、抽出し、濃度とRNA integrity numberが検討可能であることを確認したRNAを用いて、マイクロアレイによる網羅的蛋白発現解析を行った。この際は、RHOAのhotspot変異を伴いRHOAノックダウンにて生存、増殖が抑制された細胞、抑制されなかった細胞、それ以外のRHOA変異を伴いRHOAノックダウンにて生存、増殖の抑制を認めた細胞、RHOA野生細胞株でRHOAノックダウンにて生存、増殖に変化を認めなかった細胞におけるRHOAノックダウン前後の変化を調べた。その結果を、平成28年度までに行ったRHOAノックダウン細胞の3次元スフェロイド培養における表現型の変化と照らし合わせながら検討し、その原因となりうるsignal pathway活性の変化、遺伝子オントロジーエンリッチメント、発現蛋白の変化を同定した。さらに、これらRHOAノックダウン関連分子については、表現型の責任分子であるか否かを確認すべく、RHOAノックダウン細胞のレスキュー実験の条件検討までを行った。また、RHOA変異をcompound mutationsとして持つ細胞株に対しては、その機能的意義についての考察のために、trans-compound heterozygousであるかcis-compound heterozygousであるかを確認する必要があったため、mutant specific primersを作成し、これを用いて得られた特異的なPCR産物の配列をSanger法にて確認した。その結果、その細胞株におけるRHOA変異はtrans-compound heterozygousであることを確認した。また、粘膜内胃癌のリンパ節転移におけるRHOAの関与をpanel sequencingにより確認し、病理学的特徴とともに考察し、論文報告した。
2: おおむね順調に進展している
1.十分量かつ質の保たれたRNAを用いて、マイクロアレイ解析を行うことができた。2.マイクロアレイ解析の結果より、RHOAノックダウン細胞の3次元スフェロイド培養における表現型の変化の原因となりうるsignal pathway活性の変化、遺伝子オントロジー、発現蛋白の変化を同定できた。3.RHOAノックダウン後のレスキュー実験に関しては、RHOAノックダウンにより高発現となった特定の分子を候補分子として、siRNAのco-transfectionによるレスキューを複数の分子に対して試み、それぞれ条件検討を行ったが、co-transfectionを行うことによりいずれもRHOAのノックダウン効率が著しく低下し、かつ候補分子の十分なノックダウン効果も得られなかったため、検討可能な実験系を成立できなかったが、それまでの経過が当初の予定より進展していたため、全体としての遅滞は殆どなかった。4.RHOA変異をcompound mutationsとして持つ細胞株においても、その変異はtrans-compound heterozygousであることを確認でき、その機能的意義についてのより詳細な考察ができた。
1.RHOAノックダウン細胞の3次元スフェロイド培養下での表現型変化において原因となりうるsignal pathway活性の変化、遺伝子オントロジー、発現蛋白の変化の検討に関し、現時点の結果の中で述べられること、必要なレスキュー実験とその方法について再検討し、必要な追加実験を行う。2.これまでの研究成果より、①胃癌細胞株におけるRHOA変異のstatusや発現状況の結果、②RHOA変異あるいはRHOA野生細胞株のRHOAをRNA干渉によりノックダウンした際の細胞生存、増殖の変化の解析結果、③マイクロアレイによる網羅的な蛋白発現解析によるsignal pathway活性の変化、関連する遺伝子オントロジー、発現蛋白の変化の結果をふまえて、RHOAが胃癌の悪性形質発現に果たす役割に関する研究成果を取り纏めて学会、論文発表する。
当初計画では平成29年度までに、RHOAノックダウンの全トランスクリプトーム解析から、表現型変化の責任分子異常の抽出を予定としていた。しかし、当初の計画よりも進展があり、平成29年度の7月の時点で既にマイクロアレイ解析の結果より、表現型変化の責任分子異常の候補を同定できた。そこで予定よりも早期に、これらRHOAノックダウン関連分子については、表現型の責任分子であるか否かを確認すべく、機能解析を開始することとなった。このため、平成30年度に行う予定であった分の機能解析を前倒し支払請求し、平成29年度中に施行した。具体的には、変異RHOAノックダウンの表現型責任分子についてのレスキュー実験の条件検討と、RHOA変異をcompound mutationsとして持つ細胞株に対しては、その機能的意義についての考察のために、trans-あるいはcis-compound heterozygousであるかの確認を平成29年度中に行い、前倒し額よりも若干の残額が生じた。平成30年度は、引き続きRHOAノックダウン細胞の3次元スフェロイド培養下での表現型変化において原因となりうるsignal pathway活性の変化、遺伝子オントロジー、発現蛋白の変化の検討に関し、現時点の結果の中で述べられること、必要かつ実現可能なレスキュー実験法について再検討し、必要な追加実験を行い研究目的の達成を目指す。
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Oncotarget
巻: 22 ページ: 10808-10817
10.18632/oncotarget.24289