研究課題/領域番号 |
16K10520
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
島田 英昭 東邦大学, 医学部, 教授 (20292691)
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研究分担者 |
日和佐 隆樹 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任准教授 (30260251)
松下 一之 千葉大学, 医学部附属病院, 准教授 (90344994)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | SEREX / RalA / NY-ESO-1 / p53 / 食道癌 / 血清抗体 / 腫瘍マーカー |
研究実績の概要 |
【背景と目的】保険収載されている食道癌血液腫瘍マーカーのCEA、SCC 抗原、p53 抗体の3種を併用しても進行癌の40%、早期癌の80%では全てが陰性である。3種全てが陰性の症例は、治療効果判定や再発診断に頻繁な画像検査が必要である。本研究は、新規の標的分子としてRalAならびにNY-ESO-1に対する血清抗体検出方法を確立し、進行癌で90%、早期癌で60%程度を補足できる新たな血液検査システムを構築することが最終目標である。 【対象と方法】新規に開発するELISA検査系を用い早期診断・再発診断・治療効果判定を容易にする血液検査方法を確立する。予め倫理委員会承認を得た臨床研究として治療前後の食道癌患者から文書により了解を得てサンプリングした保存血液並びに手術施行患者の切除標本を研究対象とする。 【研究成果】平成28年度は、RalA, NY-ESO-1各抗原1種類を標的とした血清抗体検出用ELISAキットの性能試験を行い、パイロット研究として無作為抽出した保管検体100症例を用いた。免疫染色のために切除標本90症例から組織アレイを作成した。平成29年度は、複数の抗原を標的とする測定系を開発し、RalAならびにNY-ESO-1免疫染色の条件設定を行った。切除手術前後、化学療法前後の血清SEREX抗体価モニタリングの意義を検討した。平成30年度は、3種類の抗原を同時標的とした場合の相加効果を検討した。血清RalA, NY-ESO-1, p53抗体の存在の有無をWestern blotting並びに試作する血清抗体検出ELISAキットにて検討し両者の整合性を検証した。さらに、NY-ESO-1ワクチン治療前後の患者血清を用いワクチン治療と抗体価との関連性を解析した。p53抗体検出系は、特異度を改善する目的で複数のペプチド抗原を用いた検出系を新たに開発し、従来の抗体検出系と比較検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度には、文書により本人の了解を得て保管中の治療前後の食道癌患者血清を解析に用いた。すでに、同意取得済みの血清サンプルは、食道癌患者600例1000検体であり、詳細な臨床病理学的因子をデータベース化している。また、文書により了解を得た健常者の血清をコントロールとして用いた。解析対象の食道癌症例の血清は、治療前後に採取し、血清分離後、マイナス80度にて研究開始まで凍結保存されたものを使用しており、品質・データの信頼性が担保できている。平成28年度に作成した組織アレイを用いて、免疫染色の条件設定を行った。抗体陽性症例と陰性症例との染色性の違いについて解析し、特に、RalAとp53染色の相補性・相互関係について詳細に検討した。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度には、最終的な再発リスク・生存率との相関関係を検討する。研究開始前から継続的にサンプリングしている食道癌治療症例の治療経過中のサンプルを解析することで、予後、再発形式、治療効果との関連性を解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度は血液解析を主体としたため、消耗品支出が予定よりも低額となった。令和元年には、集積した手術標本の免疫染色などを大量に行なうため、平成30年度から繰越した経費を充当する予定である。令和元年の研究によって、全体計画はほぼ順調に遂行できると思われる。
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