研究課題
【背景と目的】保険収載されている食道癌血液腫瘍マーカーのCEA、SCC 抗原、p53 抗体の3種を併用しても進行癌の40%、早期癌の80%では全てが陰性である。3種全てが陰性の症例は、治療効果判定や再発診断に頻繁な画像検査が必要である。本研究は、新規の標的分子としてRalAならびにNY-ESO-1に対する血清抗体検出方法を確立し、進行癌で90%、早期癌で60%程度を補足できる新たな血液検査システムの構築を目標としている。【研究成果】平成28年度から令和2年度にかけて、RalA, NY-ESO-1各抗原1種類を標的とした血清抗体検出用ELISAキットの性能試験を行い、パイロット研究として無作為抽出した保管検体100症例を用いた。免疫染色のために切除標本90症例から組織アレイを作成した。次に、複数の抗原を標的とする測定系を開発し、RalAならびにNY-ESO-1免疫染色の条件設定を行った。切除手術前後、化学療法前後の血清SEREX抗体価モニタリングの意義を検討した。さらに、3種類の抗原を同時標的とした場合の相加効果を検討した。血清RalA, NY-ESO-1, p53抗体の存在の有無をWestern blotting並びに試作する血清抗体検出ELISAキットにて検討し両者の整合性を検証した。さらに、NY-ESO-1ワクチン治療前後の患者血清を用いワクチン治療と抗体価との関連性を解析した。令和2年度は、引き続き症例数を増やしてステージ別陽性率、5年生存率、治療効果との関連性などを解析した。p53抗体検出系についても、特異度を改善する目的で複数のペプチド抗原を用いた検出系を新たに開発し、従来の抗体検出系と比較検討した。この検出系については、PMDA承認を得て実用化した。これらの研究成果はAnnals of Gastroenterological Surgeryへ投稿して掲載された。
2: おおむね順調に進展している
令和2年度には、前年度に引き続き治療前後の食道癌患者血清の解析を進めた。すでに、同意取得済みの血清サンプルは、食道癌患者700例1150検体であり、再発予後を含めた詳細な臨床病理学的因子をデータベース化した。解析対象の食道癌症例の血清は、治療前後に採取し、血清分離後、マイナス80度にて研究開始まで凍結保存されたものを使用しており、品質・データの信頼性が担保できている。組織アレイを作成して免疫染色を行った。抗体陽性症例と陰性症例との染色性の違いについて解析し、特に、RalAとp53染色の相補性・相互関係について詳細に検討した。以上、コロナ感染症の影響で、研究助手が自宅待機となった一時期を除き、おおむね研究計画通りに研究は進行している。
令和3年度には、特に再発症例における再発前後の自己抗体価の変化を詳細に解析する予定である。研究全体計画に基づいて、最終的な再発リスク・生存率との相関関係を検討する。研究開始前から継続的にサンプリングしている食道癌治療症例の治療経過中のサンプルを解析することで、予後、再発形式、治療効果との関連性を解析する予定である。
消耗品費用はほぼ計画通りに運用されているが、わずかに節約できた。令和3年度に購入する抗体の費用に充当する予定である。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (6件)
Annals of Gastroenterological Surgery
巻: 4 ページ: 275~282
10.1002/ags3.12325
International Journal of Cancer
巻: 147 ページ: 2578~2586
10.1002/ijc.33165
BMC cancer
巻: 20 ページ: -
10.21203/rs.3.rs-18685/v1
Molecular and Clinical Oncology
巻: 13 ページ: -
10.3892/mco.2020.2098
Esophagus
巻: 18 ページ: 65~71
10.1007/s10388-020-00761-6
American Journal of Case Reports
巻: 21 ページ: -
10.12659/AJCR.922004