研究課題/領域番号 |
16K10523
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研究機関 | 静岡県立静岡がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
寺島 雅典 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (40197794)
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研究分担者 |
大島 啓一 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (10399587)
楠原 正俊 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (40169991)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 胃癌 / 網羅的遺伝子変異解析 / 網羅的遺伝子発現解析 |
研究実績の概要 |
これまで胃癌症例360例を対象として血液、胃癌腫瘍組織、非癌部粘膜から検体を採取し、全エクソン解析並びに網羅的遺伝子発現解析を実施し、ゲノム変異、体細胞変異、遺伝子増幅、融合遺伝子の検出および遺伝子発現異常の検出に取り組んでいる。 遺伝子変異解析の結果では、TMB highを35例に認めた。遺伝子変異解析、発現解析が終了した241例のデータを用いてTCGAに従って分類を試みると、EBV13例(5%)、MSI22例(11%)、CIN108例(45%)、GS92例(38%)に分類可能であった。これらの4タイプで臨床病理学的因子について検討すると、EBVでは男性でintestinal typeが多く、MSIでは高齢者でL領域に多く、CINではdiffuse type、U領域に多く、GSでは女性でintestinal typeが多い傾向が認められた。遺伝子変異・発現解析では、MSIでhypermutation, MLH1 silencingが、CINでTP53mutation, RTK-RAS activationが、GSでCDH1 mutationがそれぞれ認められ、TCGAと同様の傾向を示していた。また、無再発生存期間はEBV>MSI>CIN>GSで有意な差が認められた。 更に、術後補助化学療法が施行された102例においてクラスター解析を行ったところ、再発の高率(27/96)多いA群と、低率(1/20)なB群の2群に分類する事が可能であり、B群においては免疫調整関連遺伝子群の発現が上昇している結果が得られた。一方、術後補助化学療法が施行されていなかった46例においてはこれらの遺伝子発現と生存との間に関連が認められなかった。これまで報告されてきた薬剤代謝関連遺伝子の発現よりも免疫調整因子が強いprognostic factorとなる事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで既に胃癌360症例に関して遺伝子変異解析、遺伝子発現解析が終了している。また、融合遺伝子解析に関しても融合遺伝子パネルを用いた解析を開始している。現在、独自のアルゴリズムの開発に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られた360例の遺伝子変異解析、遺伝子発現解析のデータからクラスター解析、主成分分析などを用いて、我が国の胃癌のサブタイプ分類を試みる。更に臨床病理学的因子や生存転帰との関連を解析し、分類の妥当性について検討する。可能であれば海外の研究グループと共同研究を企画し、我が国の分類の検証を依頼する。また、各サブタイプにおいて、パスウェイ解析により主要な遺伝子異常を抽出し、新たな分子標的となる分子を探索し、Precision medicineへの応用の可能性について検討する。 更に胃癌ではあまり検討が進んでいない融合遺伝子に関しても解析を実施する。これらの研究により十分な成果が期待されるため、予定していたmicro-RNAの解析を中断し、現在の研究の進捗に専念する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
測定データの解析が遅れたため、解析に要する費用と、学会発表や論文公表に要する費用に使用する予定である。
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