研究実績の概要 |
昨年度に引き続き腹腔洗浄液中微小がん細胞(PTC)および血中循環がん細胞(CTC)の検出デバイスの改良を行い、3Dフィルター型分離デバイスで捕捉したCTC(PTC)をスライドグラスに転写、4検体の細胞診標本(パパニコロウ染色と免疫染色)を同時に作成できる自動CTC分離装置を企業と共同で試作した。さらにCTCに関しては1例の胃癌患者血液;流出路静脈血(DV)及び末梢血(PB)検体を用いて“CTC細胞診”の診断基準;Keratin陽性異型細胞を確立した。これによりCTCの同定を迅速、正確、客観的に光学顕微鏡下で行うことが可能となった。胃癌CTCの陽性率はDV;3/11(28%, 1~123/5ml)、PB;2/11(18%, 1~26/5ml)と大腸癌に比べて低いものの、大腸癌と同様PBに比べてDVでCTC数が多く認められた。一方、PTC分離に関しても、上記改良型分離デバイスを用いて胃がん(一部大腸癌)患者の腹腔洗浄液中のPTC検出の検討を行なった。その結果、血中CTCの検出と異なり、腹腔洗浄液中PTCの検出ではかなりの数の中皮細胞がフィルター上に残存するため、パパニコロウ染色のみでは中皮細胞との鑑別が問題となるが、CEA免疫染色を併用することにより従来の洗浄細胞診に比べ1回の測定で洗浄液中の全PTCを簡便かつ定量的に評価することが可能となった。 また、Trastsuzumab,TDM-1bなどの分子標的治療のためのCTCマウスモデルを確立した。これらのヒト胃癌マウスモデルを用いて分子標的薬治療前後の血中CTCの動態を検討し、治療後早期に一過性にCTC数が増加する傾向があることを見出した。この動員されたCTCの形態は原発腫瘍の組織像を反映していることから、一過性に増加するCTCが原発巣の薬剤感受性と密接に関連しており、CTCによる抗がん剤感受性評価の可能性が示唆された。
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