研究課題
マイクロサテライト不安定性(MSI)が高い大腸癌などは体細胞変異が多いため、免疫原性が高く、腫瘍内への免疫細胞浸潤が多くなり、PD-1/PD-L1経路阻害薬が有望であることが考えられている。すなわち、変異が多い癌種は必然的に新規の変異抗原も多く、その変異抗原を特異的に認識するT細胞も数多く存在すると同時にPD-1/PD-L1経路を介した免疫抑制が生じていることが想定され、PD-1/PD-L1経路阻害薬が有望であることが考えられる。Leらによると(ASCO2015)、ミスマッチ修復(MMR)遺伝子欠損大腸癌の抗PD-1抗体の奏効率、疾患制御率は、MMR遺伝子正常大腸癌に比べともに高いことが示されている。そこで、本研究の目的は大腸癌における抗PD-1/PD-L1抗体の治療効果ならびに治療効果予測に関して基礎的、臨床的検証行うことである。そこで我々はこれまでに当院で外科的根治切除を施行した大腸癌摘出標本157例を用いて、Capillary sequencerを用いてMSI assayを行い、MSI statusを確認のうえ、癌組織免疫応答に関わる癌組織浸潤性リンパ球(PD1+Tリンパ球、CD8+細胞障害性Tリンパ球及びFOXP3+制御性Tリンパ球)ならびに宿主免疫能の指標である血中総リンパ球数、好中球/リンパ球比、血小板/リンパ球比およびアルブミン/グロブリン比の関連を検討した。MSIを9例に認め、病理組織として未分化型との相関を認めた。またFoxp3陽性T細胞はMSI大腸癌組織に多く浸潤している傾向を認め、腫瘍浸潤CD8T細胞はMSI大腸癌に有意に多く認めた。本年度は、PD-L1の大腸癌組織における免疫染色を同一コホートを用いて、MSI statusや、TILとの相関を解析したが、これに関してはともに有意な相関をみとめなかった。
3: やや遅れている
遺伝子解析を行う上で、その測定系protocolの基礎実験にやや時間を有したため
今後は、同一コホートの術前血清を用いてsoluble PD-L1の定量を行い、組織におけるPD-L1発現や、MSI status, TILとの相関解析を行っていく予定となっている。
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