研究課題/領域番号 |
16K10541
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
山下 公大 神戸大学, 医学部附属病院, 特命助教 (80535427)
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研究分担者 |
神垣 隆 神戸大学, 医学研究科, 客員教授 (20372641)
岡田 誠治 熊本大学, エイズ学研究センター, 教授 (50282455)
掛地 吉弘 神戸大学, 医学研究科, 教授 (80284488)
藤田 貢 近畿大学, 医学部, 准教授 (40609997)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 同種異系 / メモリーCD8+T細胞 / 大腸癌 / 樹状細胞 / ゼノグラフト |
研究実績の概要 |
抗がん免疫応答に関わる腫瘍反応性 T 細胞を十分量提供できることが、がん免疫治療の目標の1つである。獲得免疫の抗原特異性というシステムへの期待は、多数のがん抗原の同定とがんペプチドワクチンや樹状細胞ワクチンとして研究開発に精力的に向けられたが、その治療効果は、客観的反応で平均2.6%と極めて低かった。一方、宿主に異系統(allogeneic)由来腫瘍細胞を投与しても生着しない。この理由として129S1 マウス由来 IgG を allogeneic IgG として、同種異系(C57BL6 マウス)由来腫瘍細胞とが免疫複合体を形成し、これを樹状細胞がin vitro で効率的に貪食し、強力な抗原提示能を発揮することが明らかとなった。我々はこのシステムを用いて、樹状細胞の活性化機構を明らかにし、ヒト大腸癌組織に対する治療モデルを作成する。また、前臨床研究として、ヒト大腸癌検体を高度免疫不全マウスに移植後、腫瘍樹立モデルを作成する。免疫チェックポイント阻害剤の台頭と共に、奏功症例の解析が進み、がんの発症に伴う遺伝子変異に起因する新生変異抗原(neoantigen)の存在が必要条件であることが示された。変異頻度の高い癌種に neoantigen が出現する傾向があるために、大腸癌に限った場合、Lynch 症候群を中心とした、ミスマッチ修復機構の欠損を有する症例に限られる。本研究は、大腸癌に対する免疫システムにとどまらず、neoantigenを同定するという腫瘍免疫学のテーマの一つを解明できる可能性を秘めた研究である。この研究を消化器癌に適用して解析を進め、ヒトへの臨床応用を目的とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
allogeneic IgGとして、129S1 マウス由来 IgGの採取に成功した。腫瘍(主にB16メラノーマ細胞株)とallogeneic IgGを培養し、免疫複合体を形成することを確認した状態である。現在、免疫複合体を未成熟樹状細胞に貪食させることにより、樹状細胞の成熟と腫瘍貪食能が亢進することを再現している。腫瘍細胞を共培養し、できることはかく現在、樹立腫瘍を貪食させて、評価している。現在、この評価を行なっているが、正確な評価が困難であること、成熟が不十分な場合があることが問題である。この原因について検討している。
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今後の研究の推進方策 |
免疫複合体を貪食させ、未成熟樹状細胞が成熟する過程で、十分な成熟が促されない場合は、αCD40刺激(CD40L)及びTNFαによる刺激を朝らに加えることにより、成熟がより促進される可能性があるため、これを検討する予定である。腫瘍内にallogeneic IgGに加えて、αCD40刺激(CD40L)及びTNFαの局注を行うと、強力な抗腫瘍効果を発揮することが報告されている。腫瘍内の未成熟樹状細胞を取り出し、上記のallogeneic IgG+αCD40(CD40L)及びTNFαの刺激を加えると、腫瘍内樹状細胞が成熟され、強力な抗原提示能を発揮することも同時に示されており、これを導入して、明確に上記の現象をin vitroで確認する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験試薬等の購入価格が予定より抑えられたため
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次年度使用額の使用計画 |
次年度と合算して試薬等を購入する
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