研究課題
複数の研究機関が、犬の嗅覚を介してがんをニオイによって検出可能である事を報告してきた(BMJ 2004, Integr Cancer Ther 2006,2008, Gut2011)。しかし、がん探知犬は個体差や環境によって精度が左右されるため、臨床応用、研究に資する事には様々な点で困難である。そこで我々は、知能を有さず、人間の約4倍の嗅覚受容体遺伝子を持つ線虫Caenorhabditis elegans(C. elegans) を用いてがんのニオイに対する化学走性を指標とするがん検出の可能性について解析した。その結果、線虫が、がん細胞培養液上清およびがん患者尿に対して誘引行動を示し、コントロール尿に対して忌避行動を示す事を発見した。242検体(早期がんを含むがん患者24検体、コントロール218検体)でのがん患者検出の精度は、感度100%、特異度95%と非常に高いものであった。線虫を用いたがん検出法において、早期を含む消化器癌(食道、胃、結腸・直腸、膵臓、胆管、消化管間葉性)、前立腺癌、乳癌、悪性リンパ腫を網羅的に検出可能であることを確認している。線虫を用いたがん検出法は、そのままでも高精度で安価であり、世界規模でがん医療の改善に貢献すると考えられる。しかし、臨床応用を目指してさらなる研究の発展が必要であると考えており、ニオイに関連する遺伝子異常や代謝物の詳細な検討を行うために本研究を計画した。
3: やや遅れている
大腸発がんに関連する遺伝子研究と、犬嗅覚によるがん探知の研究を順調に進んでいるが、線虫によるがん検出の一部の結果が不安定であり、マウスの自然発がんマウスモデルによるがん検出の検討が進んでいない。
犬嗅覚によるがん探知の研究を進めて、発がん仮定に生じるがんのニオイ物質と遺伝子異常の関係を検討する。
本年度は、バイオ細胞研究に重点をおき、動物実験など当初予定していた研究を次年度以降に持ち越したため。
当初予定していた動物実験などを次年度に行うため、必要なマウスなどを次年度繰越額200,000円で購入する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Annals of Oncology
巻: 27 ページ: 1266-1272
10.1093/annonc/mdw162
J Clin Oncol
巻: 34 ページ: 2906-2913
10.1200/JCO.2016.67.0414