研究実績の概要 |
癌特異的メチル化遺伝子同定法を開発以来 (Yamashita K, et al. Cancer Cell 2002)、大腸癌における癌特異的なメチル化遺伝子を進めてきた (Kim MS and Yamashita K et al, Cancer Res 2006, Brait M and Yamashita K et al, 2012)。同定された遺伝子の中で最も AUCが高く癌特異的マーカーとしてポテンシャルの高い CDO1遺伝子メチル化 (AUC=0.97)について、原発大腸癌における臨床的意義を明らかにするために adenoma-carcinoma sequenceを含めた調査をおこなった (Kojima K et al, PLoS One 2018)。その結果、大腸癌におけるCDO1遺伝子のメチル化は前癌段階でみられること、癌化に向けて漸増すること、遠隔転移例では特に高値であることを明らかにした。そこで、本研究では CDO1遺伝子メチル化を DNA markerとして用いて微量癌細胞の検出をすることにより、大腸癌の新たなマーカー開発を行うことを目的とした。 当院手術症例の中から、インフォームドコンセントを得られた50例の大腸癌と12例の非癌患者の便検体を用いて癌の検出能について解析をおこなった。予備実験としてQ-MSPで12例の大腸癌患者の検討を行ったが1例にも検出できなかった。内部コントロールの beta-actinの値から考えて便検体には人由来DNAが少ないことが原因と考えられた。そこで、Nested outer PCR amplificationで人由来DNAを増幅後 inner Q-MSP/Q-ddCPRを行う方針とし、NOPIQ/NOPIDと呼称し特許申請を行った。Dd-PCRとはdigital droplet PCRのことで、ロッシュ社の機器を用いた。その結果、FIT (fecal immunological test)と合わせることにより 100%の検出感度を確認できた。今後は前向き研究により結果を確認して臨床的有用性を証明し商品化を目指す。
|