研究課題
大腸癌は悪性新生物の中でも高齢化や生活習慣の変化に伴いその罹患率,死亡率が増加傾向であり,現在女性の死因第1位となっている.細胞接着斑アダプター分子であるHic-5 (H2O2-inducible clone-5)はヒト大腸癌組織において癌細胞ではなく癌間質の線維芽細胞cancer-associated fibroblasts, CAFs)に発現していることがわかっている.Hic-5が大腸癌の発生過程に関与していると考えられ,我々が行った予備実験では発癌物質を用いた大腸癌モデルマウスを作成したところ,Hic-5ノックアウトマウスにおいて大腸癌の発生がほぼ抑制されていた.以上の背景に対して本年度はヒト大腸癌サンプルから得られたCAFsを用いてex vivoにおけるHic-5が癌細胞に与える影響の解析を行った.まず線維芽細胞にHic-5が誘導される条件の検索を行った.具体的には大腸癌細胞株との共培養や癌関連サイトカイン刺激で線維芽細胞中のHic-5の発現上昇することを確認している.次に線維芽細胞のHic-5が癌細胞に対してどのように作用しているか,shRNAを用いて線維芽細胞のHic-5発現を抑制した細胞を作成して実験を行った.野生型線維芽細胞もしくはHic-5抑制線維芽細胞と大腸癌細胞株を共培養したところ,Hic-5抑制線維芽細胞において癌細胞の増殖が抑制されることが判明した.またHic-5がECMのリモデリングに関与しているとする報告が近年あり,今後はリモデリングタンパク質とHic-5との関連を追求していく方針である.
2: おおむね順調に進展している
平成28年度はおおむねに計画通りに進んでおり、現在までにヒト大腸癌から分離した線維芽細胞の不死化およびHic-5発現抑制化が完了しており,引き続き発癌メカニズムの解析を行っている.
今後は免疫不全マウスNOD/Shi-scid,IL-2Rγ KO Jicを用いて異種移植実験を行い,Hic-5抑制線維芽細胞を用いた場合に癌腫形成を抑制できるか否かを評価する.またHic-5とECMリモデリングに関与するタンパク質との関連を調べると共にコラーゲンゲルなどを用いた実験系でリモデリング能を評価する予定である.
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件)
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