研究課題/領域番号 |
16K10556
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
小泉 岐博 日本医科大学, 医学部, 助教 (40328802)
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研究分担者 |
山田 岳史 日本医科大学, 医学部, 准教授 (50307948)
内田 英二 日本医科大学, 医学部, 助教授 (70176684) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 直腸癌 / 術前化学療法 / cell free DNA / 効果予測因子 |
研究実績の概要 |
我々は直腸癌に対する術前術前化学療法(Neoadjuvant chemotherapy: NAC)としてFOLFOXレジメンを6コース行う第Ⅱ相臨床試験を行った。手術切除標本において組織学的に化学療法奏効例(57%)と非奏功例(47%)の3年無再発生存期間はそれぞれ、96%、76%(p=0.006)であった。 循環血液中の分断化されたDNA (circulating cell free DNA : ccfDNA)をliquid biopsyとして予後予測、化学療法の効果予測への臨床応用の研究を進めている。循環血漿中のccfDNAには癌組織由来以外のccfDNAを含んでおり、癌組織に特異性の高い指標として ccfDNA量のなかのlong fragment /short fragment比(DNA integrity: DI)があげられる。 16例のNACを施行した直腸癌症例のNAC前後のccfDNAサンプルを用い、手術切除標本における化学療法の組織学的効果と関連を検討した。その結果、NAC前後のccfDNAの変化においても全ccfDNA量は化学療法の効果との関連はなかったが、DIの変化率が20%以上あるものは奏功例で91%、非奏功例は20%(p=0.013)であり、DI変化率が組織学的奏功を反映し、予後予測のバイオマーカーとなりうることを示した。 臨床的にはNAC開始から早期の段階で治療の効果予測をすることが重要である。NAC有効症例を抽出し、治療を集約することがNACの効率的な活用法であり、無効症例は他の治療法に振り分けることが直腸癌治療の成績向上につながると考える。これまでの集積症例でNAC開始から2コース目の血液サンプルを採取しており、現在、NAC前と2コース終了時のDIの変化率と組織学的効果との関連を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
NAC治療前後におけるDI変化率がNACの効果と予後予測につながることが示すことができた。臨床的にはNAC治療から早期の変化率が予後予測につながることが重要である。NAC無効例を抽出し、他の治療への変更を可能とすることで、ひいては直腸癌治療の成績向上につながると考えている。NAC治療中のccfDNAサンプル集積が遅れたため進行がやや遅れたが、現時点ではサンプル集積は終了している。
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今後の研究の推進方策 |
NAC導入早期のDI変化が治療効果を反映するかを検証すること。NAC開始前と2コース時点のccfDNAを測定し、その時点のDI変化率が効果判定を反映するかを検証する。 さらに、我々はこれまでにdigital PCR法を用いて切除不能大腸癌症例の切除標本におけるras変異がccfDNAで検出可能であること、これらの症例のうち化学療法が奏功したものはccfDNA中のras変異のコピー数が減少することを報告してきた。 この結果を応用し、NAC前の生検サンプルでras変異症例を抽出し、NACによるras変異コピー数の変化がNAC効果予測につながるかを検討する。DIは正常組織由来のccfDNAに影響を受けやすい。癌組織に特異的なras変異をマーカーとして用いることが、より精度の高い効果予測につながると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
症例集積、血液サンプルの集積に遅れが生じたため、本年度中のccfDNA解析数が予定よりも少なかった。本年度末に症例集積、血液サンプルの集積が完了したため、次年度に費用を繰り越し、サンプルの解析費用に使用の予定である。 また、これらの集積したサンプルを利用して、ccfDNA中のras変異測定を行うためにも次年度に予算を繰り越すこととした。
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