研究実績の概要 |
直腸癌術前化学放射線療法(CRT)の効果予測マーカーとしての血清中microRNA(miRNA)の有用性を検討するため、まず、血清サンプルの集積を行った。がん研有明病院で術前CRT後に手術を行った下部直腸癌症例94例から、CRT前の血清サンプルを回収し、-20℃で保存した。 対象94例の切除検体で、直腸癌の病理学的評価によるCRT効果判定を行った。12例で腫瘍細胞の消失(pathological complete response: pCR)を、9例でわずかな腫瘍細胞の遺残(near-pCR)を得た。この21例(22%)を効果良好群、残りの73例を効果不良群とした。 次に、保存した血清サンプルからtotal RNAを抽出した。この際、合成small RNAであるcel-miR-39を加え、のちのmiRNA解析でノーマライゼーションに用いた。NanoDropでRNA濃度を測定し、-80℃で保存した。 次に、miRNAのmicroarray解析を行った(Affymetrix miRNA 3.0 Array)。解析には、効果良好群の13例と効果不良群12例のRNAサンプルを用いた。効果良好群と効果不良群で血清レベルに有意な差を認めるものとして、12種類のmiRNA(let-7b, miR-122, miR-1246, miR-20a, miR-423-5r, miR-425, miR-4281, miR-4429, miR-4484, miR-4487, miR-4505, miR-4507)を同定した。いずれのmiRNAも、効果良好群と比較して効果不良群で血清レベルが有意に高値であった。 現在、TaqMan real-time PCRにより、microarray解析で同定したmiRNAのvalidationを行っている。
|