研究課題
大腸がん患者の死因の多くは、遠隔転移に起因する割合が最も高いが、現段階では、遠隔転移の早期診断法や有効な治療法もない。その理由の一つは、大腸がん転移メカニズムの詳細が明らかにされていないためである。大腸がん転移において、がん細胞と周囲の間質細胞との相互作用が転移を促進していることが報告されているが、その詳細は不明である。本研究は、トランスポゾンを用いて変異を挿入したゼブラフィッシュに大腸がん細胞を移植する転移モデル系を構築し、間質細胞側の大腸がん転移促進・抑制遺伝子の同定および機能解析を行い、間質細胞の大腸がん転移における役割およびそのメカニズムを明らかにすることを目的とする。本年度は、ゼブラフィッシュ個体中のがん細胞の転移をモニターするために、蛍光赤色蛍光タンパク質遺伝子を導入した大腸がん細胞の作製を行った。まず、赤色蛍光タンパク質遺伝子を発現するウイルスベクターを作製し、本ベクターを用いて、赤色蛍光タンパク質遺伝子を大腸がん細胞に導入した。次にセルソーターを用いて、赤色蛍光タンパク質が発現している大腸がん細胞を分離した。現在、大腸がん細胞株とゼブラフィッシュを用いた大腸がん転移モデルの作製を検討している。来年度以降は、大腸がん転移に必須な間質細胞の因子を同定するために,トランポゾンを用いた挿入変異導入系を利用して、間質細胞のゲノムDNAに機能欠損型変異および機能活性化型変異を導入できるゼブラフィッシュの作製を行っていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
昨年度は、ゼブラフィッシュを用いた大腸がん転移モデルを作製するために必要な赤色蛍光タンパク質遺伝子を導入した大腸癌細胞の作製を行い、恒常的に赤色蛍光タンパク質を発現する大腸がん細胞株を樹立した。
今後の研究予定としては、上記の赤色蛍光タンパク質を発現する大腸がん細胞株とゼブラフィッシュを用いて大腸がん転移モデルの確立、およびトランポゾンを用いた挿入変異導入系を確立を行っていく予定である。
昨年度はゼブラフィッシュの飼育施設が完成しておらず、がん細胞株を用いた実験が中心となってしまったため。
本年度以降は、細胞株を用いた実験の試薬だけでなく、ゼブラフィッシュの飼育並びにそれを材料とした実験に本研究予算を使用して行く。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Scientific Report
巻: 6 ページ: 1-11
doi: 10.1038/srep23899
巻: 6 ページ: 1-9
Oncology Letters
巻: 12 ページ: 4773-4778
doi: 10.3892/ol.2016.5271