研究課題/領域番号 |
16K10560
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
宮崎 利明 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (50589075)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | がん幹細胞 / 転移 |
研究実績の概要 |
近年、大腸がんを含めた多くの難治がん種においてがん幹細胞の存在が報告されており、発がん・転移・薬剤抵抗性の過程に大きく関与している事が明らかになりつつある。当研究室では、大腸がん臨床検体からスフェロイド細胞の継代培養系を確立しており、そのスフェロイド細胞ががん幹細胞の特徴を有していることを明らかにした。大腸がん原発巣から樹立したスフェロイド細胞に比べ、肝転移した大腸がんから樹立したスフェロイド細胞において、メタボローム解析により細胞内に置けるキヌレニン量の増加やマイクロアレイ解析によりキヌレニンの合成を担うTryptophan 2,3-dioxygenase (TDO2)の発現が亢進していることを発見している。このことから、がん幹細胞の転移にTDOやキヌレニンが関与していることが示唆された。キヌレニンは、免疫細胞を制御する。一方、がん細胞においては、転移能を促進させるとの報告もある。TDO2はがん細胞内で発現が上昇しているが、未だキヌレニンやTDO2のin vivoにおける免疫抑制やがん細胞転移の作用メカニズムの解明は十分ではない。大腸がん細胞におけるTDO2の発現がもたらす影響を解析するために、マウス大腸がんCT26細胞株を用いて、レンチウイルスによる過剰発現系を構築し、in vitro細胞培養系における細胞増殖と移動能に対する変化を解析したところ、細胞増殖と移動能共に影響を及ぼさないことを新しく明らかにした。TDO2を介して代謝されたキヌレニンは免疫細胞の制御に関与することが報告されていることから、免疫細胞を抑制することによりがん細胞遊走能が亢進していると考えられた。さらに、個体レベルにおけるTDO2の機能を解析するために、マウスの転移モデル用いてTDO2を過剰発現したCT26細胞を移植した場合の腫瘍増殖、転移能、ならびに免疫細胞への影響を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸がん細胞におけるTDO2の発現がもたらす影響を、マウス大腸がんCT26細胞株を用いて、レンチウイルスによる過剰発現系を構築し、in vitroの細胞培養系における細胞増殖と移動能に対する影響を解析した。さらに、個体レベルにおけるTDO2の機能を解析するために、マウスの肝転移モデルを用いてTDO2を過剰発現したCT26細胞を脾臓移植した場合の腫瘍増殖、転移能への影響、また、TDO2を過剰発現したCT26細胞を移植し、腫瘍細胞、ならびに周囲間質細胞や浸潤している免疫細胞への影響を解析している。さらに、肺転移への影響も解析している。 これらの解析より大腸がんにおいてTDO2の発現が、がん細胞と周囲環境との相互作用に変化を生じさせ、作用するメカニズムをin vitroの細胞培養系とin vivoの転移モデルを用いて解析している。これらより、ほぼ計画通りに研究が進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、大腸がん細胞におけるTDO2の過剰発現細胞を移植した場合の腫瘍増殖、転移能、ならびに周囲間質細胞や浸潤している免疫細胞への影響を解析する。また、臨床検体スフェロイド細胞を用いて解析する。そして、臨床サンプル解析により、診断マーカーまたは治療法の新しい分子標的としての意義を明らかにする。以上の解析からTDOの発現がもたらす微小環境変化と腫瘍増殖・転移メカニズムを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた、細胞培養に関わるディッシュ、プラスティックチューブや培地、血清やマウスの購入量が少なく済んだため。また学会参加費、旅費が少額であった。 TDO2を過剰発現したCT26細胞を移植し、腫瘍細胞、ならびに周囲間質細胞や浸潤している免疫細胞への影響を解析するための実験動物とその飼育、床敷などの飼育代として使用する。大腸がん細胞におけるTDO2の発現がもたらす影響を、スフェロイド細胞やマウス大腸がんCT26細胞株を用いて、レンチウイルスによる過剰発現系を構築し、in vitroの細胞培養系における細胞増殖と移動能に対する影響を解析するための試薬類、プラスチックチューブ、血清・培地に充当する。免疫系細胞のFACSソーティングに必要な抗体代として使用する。また、論文投稿時の印刷代に使用する。
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