研究課題
癌細胞が発現している糖鎖と癌の悪性度:浸潤能、上皮間葉転換(Epithelial-Mesenchymal Transformation, EMT)との関連性を解明することを目的とした。肝癌細胞株にいて、細胞外マトリックスの破壊に関連するurokinase type plasminogen activator(u-PA)の産生能と糖鎖の関連性を解析した。浸潤能の異なる肝癌細胞株(HLE、HLF、HepG2)の培養細胞を用い、各細胞で、u-PAの発現をWestern Blotで評価した。全自動血清糖鎖プロファイル解析装置により糖鎖の精製と構造解析を行った。その結果、HLEはu-PAの産生が高く、HepG2はu-PAの産生が最も低く、HLFはその中間でであった。浸潤能はu-PA産生能に応じて、HLEは高浸潤能を有し、HLF、HepG2に順であった2種類の肝癌細胞株(HLE、HepG2)の培養細胞を用い、各細胞で、E-Cadherin、N-Cadherinの発現をWestern Blotで評価した。高浸潤能肝癌細胞株HLEでは、E-Cadherinの発現低下し、低浸潤能HepG2の細胞株は高発現していた。N-Cadherinはともに発現していたが、低浸潤能HepG2の方が高発現していた。高浸潤能肝癌細胞株HLEと低浸潤能HepG2の2つの細胞株における、グライコブロッティング法による糖鎖の網羅的定量解析では全86種類の糖鎖が検出された。HepG2とHLE間での糖鎖発現の比較では、浸潤能の高いHLEにおいて11種類の糖鎖が増加していた。浸潤能の変化で糖鎖変化するか検討するために高浸潤能の肝癌細胞株HLEで、u-PAを発現抑制し、低浸潤能のHepG2でu-PAを強制発現させ、グライコブロッティング法による糖鎖の網羅的定量解析を行い、全86種類の糖鎖が検出され、1851m/z、2521m/zが浸潤能変化に共通の糖鎖であった。